ランキングから外れたクラブの中で特筆すべきは、セリエAのナポリだ。米紙ニューヨーク・タイムズ傘下のオンライン・スポーツ専門誌ジ・アスレチックが匿名情報筋を引用して報じたところによると、ナポリは最近、スポーツ専門プライベート・エクイティ(PE)企業の米アンダードッグ・グローバル・パートナーズから約23億ドル(約3700億円)相当の買収提案を内々に提示された。(フォーブスが確認した投資家向けメールでアンダードッグは提案を行ったことを明確には否定せず、「現段階では報道されている情報はすべて単なる憶測と受け止めるべきだ」と記している)
選手移籍収入を除いた2024~25年シーズンのナポリの収益は1億9700万ドル(約313億円)で、その約11.7倍に相当する買収提案額は、欧州サッカー界においても極めて異例だ。
たとえば、3月に完了したラ・リーガのアトレティコ・マドリードの米スポーツ投資会社アポロ・スポーツ・キャピタルへの売却では、負債を含む評価額は現在の為替レートで約29億5000万ドル(約4700億円)とされ、前シーズンのクラブ収益額の約6倍だった。プレミアリーグを見ても、フォーブスによる上位5クラブの評価額は直近1年間の収益の6.0~8.3倍で、6位以下のほとんどのクラブは4倍未満だ。インテル・ミラノやASローマといったセリエAの主要クラブは3~4倍で、同水準の倍率で計算したナポリの価値は8億ドル(約1300億円)を下回る。
なお、北米の主要スポーツリーグでは計算が全く異なり、メジャーリーグサッカー(MLS)のクラブ評価額の平均倍率は収益の8.9倍となっている。NBA(バスケットボール)は12.9倍、NFL(アメリカンフットボール)は10.7倍、NHL(アイスホッケー)は8.9倍、MLB(野球)は7倍だ。
このような差が生じるのは、欧州のサッカークラブが投資家にとって魅力的でない課題をいくつも抱えているためである。最たるものが、昇格・降格制度だ。たとえばイングランドでは毎年、プレミアリーグから2部リーグのEFLチャンピオンシップに降格する3チームは、年間収益が数千万ドル減少する。この脅威は、今季かろうじて降格を免れたトッテナム・ホットスパーのように、老舗クラブにも常に付きまとう。
また、欧州のリーグは米国のスポーツリーグの多くと比べてメディア権市場への反応が鈍く、商業化されていない広範なスポーツ文化とも折り合いをつけなければならない。プレミアリーグのリバプールは今年5月、ファンの抗議を受けて、予定していたチケット価格の値上げプランを撤回した。2025年のチケット相場は平均99ドル(約1万5700円)で、欧州のライバルクラブのほとんどより高額とはいえ、NFLのトップフランチャイズの平均チケット価格の半額以下だ。
さらに、欧州サッカーには年俸総額の上限を定めるサラリーキャップ制がなく、才能あるトップ選手の獲得合戦が伝統的に事業としての採算性を損なってきた。
これらの要因は、レアル・マドリードが収益額ではNFLのダラス・カウボーイズを上回りながら、評価額ではフォーブスの「世界で最も収益性の高いスポーツチーム」1位に君臨するカウボーイズの130億ドル(約2兆円)に遠く及ばない理由を説明している。


