シェラトンやウェスティン、セントレジスといったアメリカを代表するホテルが、中国の物になるか日が近いかも知れない。
政府系ファンドを含む中国企業少なくとも3社が、米スターウッド・ホテルズの買収に向け準備を進めていると複数のメディアが報じた。「シェラトン」、「ウェスティン」を世界展開する同社の時価総額は126億ドル(約1兆5200億円)と言われ、取引が成立すれば、アメリカにおける中国企業による史上最大規模の買収になる可能性がある。
契約が成立した場合、2014年10月に中国の保険会社、安邦保険集団(Anbang Insurance)がニューヨークの老舗高級ホテル「ウォルドフ・アストリア」を19億5000万ドル(約2100億円)で買収して以来、中国企業による買収劇としては2番目の大型買収となる。
この巨額投資は、勢いを増す中国マネーによる米不動産市場の買い漁りの一部にも見える。「しかし、彼らはブランド力優先で値上がり期待の薄い物件まで買い漁っているわけではない。彼らが行っているのは分散投資だ」とグローバル・リアル・エステートのフィリップ・フェダー会長はフォーブスの取材に話した。
2013年にはニューヨークのGMビルの株式40%を中国の女性富豪が14億ドルで取得。老舗超高級ホテル、ウォルドフ・アストリアの買収の例を見ても、中国の投資家にはブランド志向の商業不動産を買い漁るイメージが定着しつつある。
フェダー氏は、今回の案件の長期的な展望について次のように指摘した。「(スターウッドの買収から)中国企業や投資家が先を見越し、投資をより複合的に捉えていることが分かります。それは1980年代の日本の投資家には出来なかったことです」
「セントレジス」、「シェラトン」、「W」といった有名どころがパッケージになったようなスターウッドの買収は、収益性の面でも大きな成果が予想される。中国企業らは既存のネットワークを広げ、国内の系列ホテルを増やすことができる。スターウッドは、現在中国国内だけで150の直営とフランチャイズを、ヨーロッパでもほぼ同数のホテルを運営している。
米コンサルタント会社ロディアム・グループの調べでは、2015年上半期、アメリカにおける総額64億ドル(約7720億円)に上る対外直接投資の65%を中国からの投資が占めている。また、フェダー氏によると、国家の安全保障に関わる半導体産業などとは異なり、不動産やサービス分野への投資には当局の監視も比較的緩やかだという。
「中国人は長期的な視点で投資を考えており、健康的な投資姿勢と言える」とフェダー氏は述べた。