ロシア領内を経由してカザフスタン産原油を黒海へ輸送する「カスピ海パイプライン・コンソーシアム(CPC)」は、カザフスタンにとって最も重要な輸出ルートの1つだ。ロシアはこれまで、法的手段を通じて中央アジアのエネルギーの流れに対する影響力を依然として保持していることを示してきた。ロシアの裁判所は2022年、書類上の不備を理由に、CPCターミナルの操業を30日間停止するよう命じた。2025年には、前年末に発生した原油流出事故に関連する検査の結果を受け、黒海沿岸のノボロシースクにあるCPCターミナルの係留施設3カ所のうち2カ所の使用停止を命じた。
西側諸国による制裁にもかかわらず、ロシア国営天然ガス企業ガスプロムが運営するガスパイプライン「トルコストリーム」はロシア産ガスを南東欧の一部地域に供給し続けている。ロシアは2025年1月、同パイプラインを通じたガス輸出量を前年比10.3%拡大した。
バルト海沿岸のロシアの港湾も、原油および精製製品の重要な輸出拠点であり続けている。これらのターミナルは同国の海上原油輸出の47%を占めており、うち22%がプリモルスク港から、20%がウスチルガ港から出荷されている。だが、ウクライナ軍による無人機攻撃により輸出量は減少しており、2026年3月の最後の9日間だけで、ウスチルガ港の石油輸出量は前年同期比で74%減少した。
アゼルバイジャンやカザフスタンはロシアに取って代わるのか?
端的に言えば、アゼルバイジャンやカザフスタンは完全にロシアのエネルギー供給を代替することはできず、ましてや即座に取って代わることは不可能だ。
アゼルバイジャンの石油生産規模はロシアの輸出量を完全に代替できるほどではなく、カザフスタンは依然としてタンカー不足や港湾の障害、旧来の設備への依存という課題を抱えている。しかし、両国とも南ガス回廊、BTCパイプライン、カスピ海横断輸送、そして欧州や中国との連携強化を通じて、代替手段を着実に拡大しつつある。
ロシアは依然として世界有数の石油・ガス生産国であり、パイプラインや港湾を含む輸出設備は欧州とアジアの双方にとって重要な役割を果たしている。CPCやトルコストリーム、バルト海の輸出ターミナルといった経路は、エネルギーの流れに対してロシアが影響力を維持し続ける要因となっている。また、イラン情勢の混乱でも見られたように、ロシアは世界的なエネルギー危機からも利益を得ている。
しかし現在、供給源多様化の波が押し寄せている。欧州やユーラシアが単一の支配的な供給国に依存するのではなく、複数の供給国や経路を確保するにつれ、ロシアの価格決定力と政治的影響力は大幅に低下している。米国がロスネフチやルクオイルといったロシアの大手石油企業を制裁対象に指定したことで、2025年第4四半期にはロシア産原油は平均8.3%のディスカウントで取引された。
ロシアは今後もエネルギー大国であり続けるかもしれないが、抜本的な政策転換がない限り、欧州のエネルギーの未来を左右する力は失われ、向こう10年程でユーラシアにおける支配力は著しく低下する可能性がある。


