サイエンス

2026.06.14 17:00

嫌悪感は人にとって「最強の防衛システム」、進化生物学が解説

stock.adobe.com

嫌悪の3つの側面

2012年に学術誌『Assessment』に発表された研究は、嫌悪に関して、互いに異なるが関連しあう3つの領域からなる枠組みを提示した。これらを個別に理解することは、嫌悪の感情が、なぜ人間生活のさまざまな側面に関与しているのかを説明するのに役立つ。

advertisement

1. 病原体嫌悪は、最初に出現した嫌悪だ。腐った食べ物、排泄物、傷、病気など、微生物による脅威を示唆する、あらゆるものが対象となり、最も古くから存在する最も明確な嫌悪だ。これは、「汚染に対する敏感さ」と強く相関しており、3つの嫌悪の領域の中では、その現れ方が、文化の違いを超えて最も一貫している。局所環境における病原体のリスクが客観的に高まっている場合、嫌悪の感受性(感じやすさ)も、それに伴って高まる傾向にある。

2. 性的嫌悪は、生殖の領域をカバーする。近親相姦、獣姦など、生殖適応度の低下につながる、あるいは、遺伝的な相性の不適切さを示唆する行動が対象となる。進化の観点から見ると、この嫌悪の領域は極めて理にかなっている。誰を配偶者として選択するかという判断は、他の多くの判断とは比べ物にならないほどの重大な結果をもたらし、その誤りの代償は、世代を超えて影響を及ぼす。性的嫌悪は、一種の品質フィルターとして機能する。大雑把であり、時には誤作動を起こすこともあるが、進化的な時間軸で見れば、正しい方向性を示す。

3. 道徳的嫌悪は、哲学的に最も議論の分かれるものでもあるし、率直に言って、最も興味深いものだ。残酷さや、倫理的な意味での「腐敗」、裏切りなどに対して純粋な嫌悪を覚えたり、ある人物を「病んでいる」あるいは「歪んでいる」と表現したりする時、我々は、物理的な汚染に関する表現や感覚を借り、それを社会的な世界に当てはめている。これは、進化的な拡張を表している。もともとは有害な食べ物を口に入れることを拒絶するために生まれたシステムが、時間の経過とともに、社会的・道徳的な脅威を含む、より幅広い脅威を回避するために転用されるようになったのだ。

advertisement

嫌悪が引き起こされると、たとえそれが道徳とは直接関係のない刺激によるものであっても、厳しい道徳的判断が下されやすくなる。注目すべきは、どの領域であれ、嫌悪すべき人物と見なされた者は、現実の社会的代償を被ることになる点だ。すなわち、配偶者としての価値が低下し、他者が友情や協力関係を結びたがらなくなる。この意味において嫌悪は、社会的制裁の手段でもある。規範を守らない者を、排除によって罰するからだ。

次ページ > 進化の歴史が、あなたの生命を守る

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事