未完成の骨格は、「人類の知性」のための設計図
こう捉え直してみよう。新生児の手首の骨が軟骨性で、よちよち歩きの幼児の椎骨がまだ融合しておらず、10歳児の成長板が開いており、20歳でもまだ鎖骨が融合を続けているからといって、それらはいずれも設計ミスではない。それらは、ヒトの脳が本物の脳へと変わっていくために必要な、拡張された「発達の滑走路」なのだ。
神経の発達段階の大部分は、子宮の外、つまり、言語や表情、動き、社会の複雑さで満ちた世界で進んでいく。ということは、ヒトの神経回路は経験によって形づくられていくわけだ。そのような霊長類はほかに存在しない。
前述した、2023年の『Nature Ecology & Evolution』に掲載された研究が結論付けているように、髄鞘化が出生後まで行われないという「遅れ」と、神経の可塑性の関係性がおそらくは、「未完成の体」と「並外れた知性」を結びつけるメカニズム上のつながりなのだろう。
長時間を要する骨格の構築と、長期にわたる脳の発達過程は、別々の現象ではない。骨格と神経細胞という異なる部位で同時に発現した、同一の適応なのだ。
こうしたプロセスは、一見すると不完全に見えるが、深く調べてみれば、霊長類の系統において最も洗練された発達戦略と言えるだろう。私たちヒトは、子どもが自立するまでの年月より、骨格が完成するまでの年月の方が長い、唯一の哺乳類だ。これは決して偶然ではない。それが我々の設計図なのだ。


