この方向転換こそが、自動車販売が振るわない中でもテスラ株が上昇することが多い理由だ。投資家たちはテスラを自動車メーカーでロボット会社、そしてソフトウェア開発企業でもあるAIプラットフォーム企業に近い存在としてとらえるようになってきている。一例を挙げると、東京に住む私の日本人の友人(匿名を希望)は昨年、マスクの自動車以外の事業に1000万ドル(約16億円)以上を投資した。
実質的にテスラは「EV界のアップル」から「アップルとエヌビディア、ウーバーを融合させたような企業」へと進化するという、業界で最も困難な変革に挑戦しているのかもしれない。
この変革は最終的に成功する可能性がある。テスラは依然として、世界最大級のEV充電ネットワーク、圧倒的な世界的ブランド認知度、ソフトウェアに関する深い専門知識、そしてテスラを技術の雄と見なし続けている忠実な顧客層という大きな強みを持っている。
また、エネルギー貯蔵事業も急速に成長しており、同社の収益構成においてますます重要な位置を占めるようになっている。一方、中東の不安定な状況に端を発したガソリン価格の高騰は世界的なEV需要を支えている。
リスクは極めて大きく
テスラはいま、危険なアイデンティティの問題に直面している。従来型の自動車購入者はテスラをコストパフォーマンスに優れた中国メーカーと比較するようになっている。一方で投資家たちはテスラを自動車メーカーではなくAI企業の基準で評価している。こうした状況があらゆる面でテスラにプレッシャーをかけている。
同社は自動運転が本当に安全に機能すること、ヒューマノイドロボットが商業的に成立すること、そして世界的なEV競争が激化する中でも収益性を維持できることを証明しなければならない。
では、テスラは衰退しつつあるのだろうか。純粋なEVブランドとして見れば、テスラが市場を席巻していた黄金期は過ぎ去っているように見える。
だがテスラ自体が衰退しつつあるわけではないかもしれない。むしろ同社は自動車メーカーという枠を超えて、はるかに大規模で大きなリスクを伴う存在へと生まれ変わろうと単に試みているだけでなく、着実に変革を進めつつあるようだ。


