過信に対してできる3つのこと
過信は人間の脳に組み込まれており、成功すればするほど増幅する。意志の力だけで抑え込むのは難しい。だが、そこに頼らずに済む意思決定の仕組みを作ることはできる。その方法は次の通りだ。
1. 反対意見を、文化的な選択肢ではなく、組織上の必須要件にする
多くの企業は、異議や議論を歓迎すると言う。だが実際には、多くの企業がそれを罰している。これを正す方法は、人々に発言を促し続けることではない。反対の立場から議論する役割を、明示的に、名前を付けて誰かに割り当てることだ。それがレッドチーミングである。計画の穴を見つけることを任務とする専任チームに、そのための権限と、率直に取り組むための保護を与える手法である。ヨム・キプル戦争後、イスラエルの情報機関は、合意された見方に異議を唱えることだけを任務とする精鋭チームを設けた。同様の手法はその後、CIA、米陸軍、さらに世界各国の軍や情報機関にも採用された。このような精査を乗り越えた計画は、より良い計画になる。乗り越えられない計画は、いずれにせよ失敗する可能性が高かったのだ。
2. 重要な前提を確認する
すべての戦略は、市場、競争相手、顧客、未来に関する一連の前提の上に成り立っている。その多くは、それを抱いている当人には見えていない。重要前提の確認とは、チームが計画の土台となっているすべての前提を列挙し、それぞれを「十分に裏付けられている」「留保付きで正しい」「裏付けがない」に分類したうえで、その前提が崩れるには何が変わる必要があるかを問う、体系的な作業である。インテルは、x86が支配的であり続けると想定していた。イスラエルは、エジプトが侵攻してこないと想定していた。これらの前提はいずれも検証されなかった。なぜなら、それらは前提のようには感じられなかったからだ。現実そのもののように感じられていた。書き出すことによって初めて、それらは見えるようになる。
3. 失敗を想定する
私の友人で同僚でもある認知心理学者、ゲイリー・クライン博士が開発した「プレモーテム分析」(事前検証分析)は、計画がすでに失敗したとチームに想像させる手法だ。単に期待を下回ったのではなく、壊滅的に失敗したと想定し、その理由を挙げさせる。クライン博士がこの手法を開発したのは、人は一度行動方針を決めた瞬間に過信するようになることを観察していたからだ。想像上の失敗は、その確信に穴を開ける。クライン博士は2007年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事で、プレモーテムは「より受け身の自己批判よりも、この演習においてはるかに高い率直さを生み出す」と書いている。ジョンズ・ホプキンス大学はこの手法を患者安全に応用している。米陸軍は戦略計画に活用している。15分で実施できる。
インテルには、モバイル向け半導体への移行に対応できるだけの技術力(エンジニアの才能)、資本、市場における地位、およびブランド力があった。しかし、同社に欠けていたのは「自らを疑うプロセス」だった。会社が自らの前提に疑問を抱き始めたときには、すでにその前提のせいで未来が失われていた。
偉大であり続けるリーダーとは、単に優れた実績を持つ者ではない。自らの実績を最も疑っている者なのだ。


