食&酒

2026.06.10 15:15

ソロ客でも食を堪能、悪目立ちせず店にも嫌気されない。これが「孤食の流儀」だ

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ランチという助走路

無事、おひとりさまを受け入れてくれる店が見つかりました。続いて、お店での実際の振る舞いについて考えていきましょう。高級店におけるソロ客は、どうしても目立ちます。むしろ「観察されている」と思うくらいの心構えで臨むのがちょうどよい。複数人のテーブルであれば、多少の粗もグループ全体の賑わいの中に紛れていきますが、ソロ客にはその逃げ場がありません。複数人で訪れる以上に服装や立ち振る舞いに気を配り、その場の空気に静かに溶け込むことを意識してください。

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もう少し率直に申し上げましょう。高級店にひとりで現れる客は、お店の側からすれば、ある種の不気味な存在です。「飲食関係者だろうか」「SNSで何か書くつもりだろうか」「テーブルにぬいぐるみを並べ始めないか」。根拠のない憶測を向けられることも、孤食にかかる一種の税金と割り切るしかありません。マナーを徹底できれば背景として自然に溶け込めますが、少しでも隙を見せると「やはりそういうことか」とジャッジされかねない。不公平ではありますが、これがおひとりさまの現実です。

そういう意味では、最初の一歩としてランチから始めるのは賢明な選択です。「外回りの合間に」「家事の息抜きに」「平日昼間は予定が合う人が見つかりづらい」といった文脈が自然に成立するランチは、ディナーに比べて周囲の目線が柔らかく、心理的な難易度が格段に下がります。もちろん「そんなこと、誰も気にしていませんよ」と笑い飛ばせる方は、そもそもこういう記事を必要としていません。ただ、こうした記事を熱心に読んでいる時点で、貴方はすでに「気にする側」の人間です。であれば、ランチという助走路を使って場慣れしていくのは決して臆病ではなく、むしろ賢明な準備と言えるでしょう。

避けたい「レフェリー然」の雰囲気

スマートフォンの凝視は気を付けましょう。手持ち無沙汰を埋めようと画面を見続ける姿は、せっかくの高級店にファストフード店のような空気を持ち込みます。動画に見入る、SNSの返信に没頭する、料理を前にして画面から目を離せない。いずれも、その場にふさわしい佇まいとはほど遠いものです。

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続いて撮影の問題。皿が運ばれるたびに1枚の写真を収める程度は、SNS全盛の今の時代、致し方ない慣習として定着しつつあります。しかし、同じ皿を何度も多角度から撮影し、大げさな機材を取り出して⾧時間構えるのは厨房のタイミングを狂わせ、周囲の客の体験をも損ないます。他の客や店内が写り込むほど無遠慮に撮り回るのは論外ですし、動画撮影はさらに問題外と心得てください。撮影に気を取られるあまり料理を放置するのも、腕を振るったシェフへの敬意を欠く行為です。

次に「異質な熱量」です。料理が運ばれるたびに独り言をつぶやく、ひと口ごとに熱心にメモを取る、目を閉じて天井を仰ぎながら味わう。本人にとっては真剣な鑑賞のつもりでも、周囲には不気味な緊張感として伝わります。静かに座っているだけのソロ客が「監視者」「レフェリー」のように映ることさえある、ということを忘れないでください。

食事のペースにも気を配りましょう。コースの流れを著しく乱すほど遅すぎるのも、次の皿をせかすような威圧感を醸し出すほど速すぎるのも考えものです。周囲のゲストと厨房のリズムに、静かに寄り添うことが肝要です。

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文=タケマシュラン

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