宇宙

2026.05.30 12:30

ISSで空気漏洩が再発、老朽化しても「まだ落とせない」米露の事情

(c)NASA

また、そもそも耐用年数を大幅に過ぎたISSは満身創痍な状態にある。ズヴェズダ以外の部位についても、10年近い運用延長に耐え得るかは今後の調査による。

advertisement

この新プランは、まだ決定されたわけではない。プレスイベントの翌日、NASAはこの案に対する事業者からの意見を集めるためにRFI(情報提供依頼)を提示した。それをもとにNASAは6月中にRFP(提案依頼)を提示し、価格・仕様などを含めた具体的なプランを事業者から募る予定だ。ただし、一部の業者や米議員からはこの新プランに対する疑念の声も挙がっている。

ロシアも2030年には間に合わない

ISSにはもうひとつの大きな不確定要素がある。それはロシアが計画する独自の宇宙ステーション「ROS」の建設だ。 

ロシア区画を米国区画から分離した際のイメージ。画面下方がロシア区画 (c)NASA
ロシア区画を米国区画から分離した際のイメージ。画面下方がロシア区画 (c)NASA

ロシアは当初、ポストISS時代に備えて、ロシア独自の新宇宙ステーション「ROS」の建設を2024年に開始する予定だった。しかし、同国の財政難からその建設開始は2027年まで後退した。その後、同計画のさらなる遅延を考慮したロシアは同計画の大幅な変更を発表。ISSのロシア区画を2030年に丸ごと分離し、ロシアの新ステーションROSとして流用するプランを提示した。

advertisement
ISSを横から見た図。現時点の計画では、ナウカから先を分離し、ロシアの新ステーションROSとして運用する予定。その際、プリチャルは廃棄され、新たな接続モジュールが用意される予定 (c)ESA(著者加工)
ISSを横から見た図。現時点の計画では、ナウカから先を分離し、ロシアの新ステーションROSとして運用する予定。その際、プリチャルは廃棄され、新たな接続モジュールが用意される予定 (c)ESA(著者加工)

ただし、複雑につながる米露の両区画を分離するには一定期間にわたる検証と、船外活動を含めた作業が必要になり、2030年のISS退役に間に合わない可能性が高い。そのためロシアは4月8日、さらなるプランを発表した。それによると、新たなモジュールをISSのロシア区画に増設したうえで、ナウカと呼ばれる多目的モジュールから先だけを2030年に分離し、それを基に新ステーションを構築するという。その場合、空気が漏洩しているズヴェズダとそこに接続するザーリャは、米国区画に接続されたまま残ることになる。

しかし、ウクライナ戦争の長期化により、さらに財政が悪化しているロシアにとって、このプランも現実的ではない。その結果、ロシアにとってもISS退役の延期は避けられないだろう。

空気漏洩が止まらず、早期の退役が望ましいとされるISS。しかし、米露の事情がそれを許さず、まだ太平洋に落とすことはできない。おそらく今後、ロシア区画の一部を閉鎖する必要性も出てくるだろう。そうした間にもさらに老朽化が進み、新たな不具合が発生する可能性もある。

編集=安井克至

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事