北米

2026.05.30 13:00

トランプの「ゴールデンドーム」は軍事テック企業の正念場 突き付けられる道徳的・現実的ジレンマ

米大統領執務室で次世代ミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」の構想を発表したドナルド・トランプ大統領。2025年5月20日撮影(Chip Somodevilla/Getty Images)

「抜け穴のない」ミサイル防衛システム構築の夢は、少なくとも1983年に当時のロナルド・レーガン大統領が開発を公約した「スター・ウォーズ計画(戦略防衛構想:SDI)」まで遡る。それから40年以上の歳月と3500億ドル(約56兆円)もの税金を費やしたにもかかわらず、ミサイル防衛への投資は目標の達成に遠く及ばない。多数の長距離核弾頭ミサイルによる実際の攻撃を阻止するのに必要な条件を再現した試験も、一度として行われていない。

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問題は、飛来する弾頭が時速2万4000km(秒速約6.7km)に達するうえ、無重力の宇宙空間では実際の弾頭と見分けがつかないようコーティングされた風船を伴っている可能性がある点だ。数千発の弾頭とデコイ(おとり)を伴うミサイル数百発で攻撃されれば、いかに大規模な防衛システムであっても、すっかり圧倒されてしまうだろう。

米連邦政府の財政監視を使命とする超党派NPO「Taxpayers for Common Sense」の報告書が指摘するように、「抜け穴のない」防衛体制を構築しようと試みるだけでも、飛来する弾頭1発あたり最大1600発の迎撃ミサイルが必要になると推定されている。保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の分析によれば、拡張版のゴールデンドームの構築・運用にかかるコストは今後数年間で最大3兆6000億ドル(約570兆円)に達する可能性があるという。

巨額の費用がかかり、成功の見込みは極めて低い。それだけでなく、ゴールデンドーム・システムの一環として宇宙に迎撃ミサイルを配備するという計画は、危険なほど見当違いだ。

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高速で移動する核弾頭を迎撃するのは困難だが、予測可能な軌道上を移動する民間・軍事衛星を撃ち落とすのは比較的容易である。だからこそ、冷戦の真っ只中でさえ、宇宙への兵器配備を禁じる規範は維持されていた。今、その制約を破れば、衛星通信に依存するあらゆる民間・軍事活動がおびやかされることになる。これは、最も野心的な目的を達成できないミサイル防衛システムに支払う代償としては高すぎる。

ここまで述べてきた現実は、防衛企業全般、とりわけ軍事テック企業に対して、道徳的かつ現実的なジレンマを突きつけている。あらゆる種類のミサイルに対応できる完全無欠な防衛体制を構築することの難しさを公に認め、より安価で現実的な代替案を提案するか、それともトランプ政権の非現実的な目標に異を唱えることなく、その前提に基づいて政府の資金を受け取るのか。

ゴールデンドームをめぐる議論に現実的な視点を注入するべき立場にあるのは、もちろん防衛企業の経営陣だけではない。科学者、連邦議員、国防総省のアナリスト、メディア、そして一般市民もまた、ゴールデンドームに関するさまざまな主張を精査する責任を負っている。とはいえ、このプロジェクトが有用な防衛システムを生み出せるか否かにかかわらず、ゴールデンドーム関連予算から利益を得ることになるテック業界のリーダーたちの声は、特に大きな影響力を持つだろう。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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