科学者たちは何十年ものあいだ、くしゃみの主目的は、単に上気道から刺激物を排出することだと考えていた。この説明は、いまでも真実であるといえる。くしゃみをすることで、粘液や微粒子、微生物、アレルゲンが、気道の奥深くまで侵入する前に、体外に排出されるからだ。
しかし、2025年のレビュー論文は新たな仮説を提示し、この反射は、鼻腔全体に粘液を再配分する役割も果たしている可能性があるとした。これにより、有害な粒子を単に外へ吹き飛ばすだけでなく、そうした粒子の捕捉や希釈が促進されると考えられているのだ。
つまりくしゃみの一部は、鼻の免疫防御機能全体を維持するためのメカニズムとして機能している可能性があるということだ。そう考えると、くしゃみの不快さが少し和らぎ、むしろ、もう少し感心すべきものに感じられてくるのではないだろうか。
くしゃみをする時に目をつぶる理由
くしゃみが出る時に目をつぶるのは、目玉が飛び出るのを止めようとするからだ、という都市伝説を聞いたことがある人もいるかもしれない。しかし解剖学的にいうと、これはまったくのナンセンスだ。目は、筋肉や結合組織、周囲の脂肪によって眼窩にしっかりと固定されている。くしゃみをしたところで、目玉がシャンパンコルクのように飛び出すほどの内圧は生じない。
この説明が成立しないのであれば、我々はなぜ、くしゃみをする時に目を閉じるのだろうか? 『Current Allergy and Asthma Reports』に掲載された2007年のレビュー論文によると、その答えは、くしゃみ反射そのもの、具体的には、くしゃみ反射が複数の脳神経経路を同時に動員する仕組みにあると示唆されている。
脳内でくしゃみを引き起こす回路が活性化したとき、協調して動くよう体が調整するのは呼吸筋だけではない。表情筋も一緒に動く。その表情筋の中には、まぶたを閉じる役割を担う眼輪筋が含まれる。
つまり、目をつぶるという動作は、くしゃみ発生プログラムそのものに組み込まれているようだ。研究者たちは、これは保護機能になるのかもしれない、と考えている。くしゃみによって、口から粘液や空中の浮遊物が勢いよく排出される時、反射的にまぶたを閉じることによって、顔の上部に向かって移動してくる汚染物質から目を守るのに役立つ可能性がある(まぶたを閉じることで、眼球が眼窩から飛び出すのを防ぐわけではないが、別の意味での保護機能はあるわけだ)。
全体として、最も単純な神経学的説明は、くしゃみの反射が始まると、周辺の運動神経路が広範囲に活性化されるというものだ。これこそが、くしゃみに伴う「特徴的な顔の歪み」を引き起こす原因と考えられている。
しかし、ほとんどの人が知らない事実がある、目を閉じることは必ずしも、絶対的な必要条件ではないということだ。くしゃみをする際、特に意識すれば、目を少し開けたままにできる人もいる。このことから科学者たちは、この反射は脳と密接に関連しているものの、意志の力ではどうにもならないほど絶対的なものではないと結論づけている。とはいえ、我々のほとんどは、本能的にその戦いに負けてしまう。


