食&酒

2026.06.07 16:30

日本酒界のニューウェイブによる、春の空を思わせるうすにごり:純米大吟醸 山恵錦

YAMASAN JUNMAI DAIGINJO SANKEINISHIKI

YAMASAN JUNMAI DAIGINJO SANKEINISHIKI

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は6月号(4月24日発売)より、「純米大吟醸 山恵錦 四割五分うすにごり」。フレッシュで軽やかなのに、芯にうまみがある。だから一杯で終わらず、料理に合わせて、気づけばずっと飲み続けてしまう1本だ。


春はあけぼの、と清少納言は書いたが、日本酒の暦で言うならば、春はうすにごり、となるか。日本酒を搾る際に完全には搾りきらず、壜のなかで活性化し続ける「うすにごり」や「おりがらみ」は主に春にリリースされ、微かな発泡や甘やかな風味で飲む人を魅了する。

この「うすにごり」を通年で販売しているのは「山三酒造」。長野県上田で150年以上の歴史を重ねながら一度休業。2023年、酒づくりとは無縁だった第三者による事業承継によって、再び息を吹き返したいわゆる“復活蔵”である。単なる再開ではなく、外からの視点をもち込むことで、土地の風土と酒の関係をあらためて問い直すという志が評価され、一躍注目の酒蔵となった。

現在4回目のつくりに入っているという同蔵で、「純米大吟醸 山恵錦 四割五分うすにごり」は初年度からつくり続けているという人気のアイテム。長野県東御市八重原産の山恵錦を45%まで磨いて使用。搾りの段階であえて澱を残し、壜内でゆるやかに発酵を続けることで生まれるのは、きめ細やかな微発泡と、やわらかな甘み、そして奥行きのあるうまみだ。濁りは淡く、口当たりはあくまで軽やか。にごり酒にありがちな重さとは無縁で、透明感すら感じさせる仕上がりに、「山三酒造」らしい美意識が表れている。

「このお酒の真価は料理と合わせることで発揮されます」と語るのは「中目黒 とりまち」(東京・中目黒)の渡辺壮店長だ。「焼鳥はシンプルな料理ですが、部位ごとに味わいや食感の振れ幅が意外に大きい。その変化にちゃんと寄り添ってくれるお酒が理想です」

「純米大吟醸 山恵錦 四割五分 うすにごり」については「フレッシュで軽やかなのに、芯にうまみがある。だから一杯で終わらず、料理に合わせて、気づけばずっと飲み続けてしまいます。日本酒好きにも、お酒を初めて飲むような若い世代や女性にも、等しく愛される懐の深さもあります」と、その魅力を表現する。

実際に焼きたてアツアツの串を頬張った後にひと口含んでみると、肉の香ばしい脂を酒がふんわり包み込み、キレが良いのに米のほのかな甘みが心地よい余韻として口中に残る。まるで春の空をごくんと飲みこんでいるようだ。ふと、目の間に“やうやう白くなりゆく”霞がたなびいたように感じたが、それは炭火から立つ煙であった。清少納言にはなりきれない春である。

純米大吟醸 山恵錦 四割五分 無濾過原酒 うすにごり 生酒

容量|720ml
度数|15.0%
価格|1800円(希望小売価格)
問い合わせ|山三酒造 https://yamasan-sake.jp/

次ページ > 今宵の一杯はここで

写真=菅野祐二 文・構成=秋山 都

タグ:

連載

美酒のある風景

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事