「それは難しい質問ですね。というのも、正直なところ、それはスポーツ分析チームの領域だからです。彼らはより多くの非公開情報を知っていますし、私よりずっと優秀なので、その質問には彼らが答えるべきでしょう。しかし、私が言えるのは、山本がポストシーズンや昨年から我々にもたらしてくれた影響と、山本が到達したレベルについてです。山本の大ファンも本当にたくさんいます。マーチャンダイジングの観点から言えば、山本のユニフォームの売上は大谷とほぼ同じレベルに達しています。それほど彼が貢献し、ファンに受け入れられているという事実です」
ドジャース特有のファン文化が、日本から来た新たなスターの定着を強力に後押ししている。
「ドジャースのファンやドジャースタジアム全体の素晴らしいところは、そこに来れば、選手が誰であれ、一人一人を全力で応援することです。チームも選手もそれを感じ取り、そのおかげでさらに強くなれるのです」
さらに興味深いのは、山本というアスリートのメンタリティが、ドジャースのビジネス部門の行動規範にまで直接的な影響を及ぼしている事実である。
「ビジネスの観点でも、山本は我々を後押ししてくれています。彼はワールドシリーズでの大車輪の活躍について『何としても負けるわけにはいかないので(“Losing is not an option”と翻訳された。転じて“負けるという選択肢はない”として使用されている)』と言いました。我々はそのメンタリティをビジネスにも取り入れています。『ビジネスにおいても負けることはできない。それが選択肢にならないようにしなければならない。ビジネスをどう前に進めていくか?』そういった考え方の面でも、山本は我々に大きな影響を与えてくれています」
フィールド上の山本の勝負への執念がそのままドジャースの文化として共有され、組織を前進させるエンジンとなっているという。
5年先を見据えたテクノロジー投資の必要性
現在の熱狂に甘んじることなく、未来の成長基盤を構築するためのテクノロジー投資に関しても、ドジャースのスタンスは極めて実務的なようだ。AIの導入は現在の流行だが、ドジャースは話題作りのために最新技術に飛びつくようなことはしない。
「明らかに、今誰もが注目しているのはAIです。しかし我々ビジネス側の人間は、今年だけでなく、今後5年間を見据えて何が良いのかを考えようとしています。一番避けたいのは、導入した途端に時代遅れになってしまうようなものに飛びつくことです。テクノロジーの常ですが、導入した頃にはすでに古くなっていることがあります。そのため、我々は5年先を見据えようとしています。現時点で『具体的にこれをする』と明言できるものはありませんが、多くの選択肢を探り、業界のトップランナーたちと協議を重ねています」
ドジャースが水面下で検討しているのは、顧客体験の向上とオペレーションの効率化に直結する極めて実用的な領域である。
「例えば、顧客サービス面で活用できないか、AIボットに電話をかけさせたり、コミュニケーションを取らせたりできないか、これは現在検討していることです。また、ファンがスタジアムで何を求めているのか、何を購入しているのかをより深く理解し、ファンのニーズを正確に把握するための手段としてAIを活用できないかとも考えています」
一方で、エンターテインメントとしてのテクノロジー体験の提供もすでに具現化している。「AI大谷の登場はないのか」と訊ねると副社長は、現在スタジアムで稼働している成功事例を明かした。


