イタリア料理「チェンチ」の坂本は「並んでいる魚の中から、自分の好みのものを探すのは、なかなか難しい状況になった。以前はたくさんの選択肢の中から選べたが、多少脂が少なかったり締まりが良くなくても、文句が言えない状況です」と、その現実を語った。
日本料理「てのしま」の林は、「食材がなくなれば、その食材特有の調理法も継承できなくなる。これは魚が獲れなくなるという単純な話ではなく、それを料理する技術や文化までが喪失しかねない」と話す。実際、てのしまがオープンしてからの8年間で、瀬戸内のアサリやタコなど、ほぼ流通しなくなったものも出てきているという。
インバウンドの食事情
「ミシュランガイド2026」において、東京・京都・大阪の掲載店は339店舗。そのうち、寿司・天ぷら・和食だけで221店舗と、約65%を占める。日本の食の国際的な評価の大半が、海の幸に支えられている。
さらに、水産物を使うのは「和食とか天ぷらだけじゃないんですよ」と佐々木が言うとおり、フランス料理「カンテサンス」の岸田は「コースの6〜7割は、水産資源を使用している」と話し、中国料理「茶禅華」の川田も「コースの中心は日本の魚介で、それを目当てに海外の方もいらしている」と明かした。
2025年の訪日外国人旅行者数は4268万人で過去最高を記録し、インバウンド消費額は9.5兆円に拡大。その82.8%が「日本食を食べること」を期待して訪日しており、滞在時に食べた料理としては、68.3%が寿司をあげている。
水産物由来の外食産業市場規模は、約7.3兆円(推定値)だ。水産物は産地価格から外食段階で7.2倍に価値が膨らむ高付加価値産品であり、関連雇用を広義で捉えれば、600万人規模のバリューチェーンを抱える。「漁業生産額1.6兆円だけで語られがちな水産業の本当の経済規模を、政策立案者に正しく認識してほしい」と、代表理事の佐々木は述べた。


