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2026.06.04 10:00

AIが変える「景気後退」の常識──高い経済成長と失業率の急上昇が両立する社会

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人工知能(AI)が経済を成長させる。その一方で、雇用は増えない。そんな奇妙な事態が、現実味を帯び始めている。

米国では大恐慌以降、GDP(国内総生産)が経済の健全さを測る主要な物差しとされてきた。GDPが伸びれば経済は成長、長く縮めば景気後退(リセッション)と判断される。そして景気後退は通常、失業の増加を伴ってきた。力強い成長と高い失業率は同時には起きない。それが長年の常識だった。

米国の失業率は足元で4%台前半と、歴史的に見れば低い。5%を超えると経済学者は警戒し、8%ともなれば異例と受け止められる水準だ。

だが、AIが少ない人手で多くを生み出せるようになれば、この前提は崩れるかもしれない。GDPは伸び、企業利益も膨らむのに、雇用だけが取り残される。国は数字の上で豊かになると同時に、多くの家庭は現実には貧しくなったと感じる。そうした経済が近づいているのではないかとの見方が出始めている。

すでにメタなど米国の大手企業は、AIを理由に人員削減を進めている。成長と暮らしの実感が食い違い続けるなら、GDPの伸びだけで経済の健全さを測れるのか。その問いが、今まさに重みを増している。

数カ月の仕事を数時間でこなすAIに、億万長者が姿勢を一変

ケン・グリフィンは、マイアミに拠点を置く巨大ヘッジファンド、シタデル(Citadel)の創業者であり、680億ドル(約10.81兆円。1ドル=159円換算)の投資資本を擁する億万長者だ。グリフィンはAIへの不安を本気にしていなかった。1月のダボス会議で、AIが生み出すものを「ごみ」だと切り捨てた。

ところが5月になって、グリフィンの見方は180度変わった。かつてシタデルの社員が数週間、場合によっては数カ月かけていた複雑な仕事を、AIエージェントが数時間でこなすのを目の当たりにしたのだ。

シタデルの事業は、優秀な頭脳を持つ人材を採用することを土台にしている。同社の従業員の40%超は上級学位を持ち、40分野に約270人の博士号取得者がいる。彼らは米国でも最高水準の報酬を得る労働者であり、シタデルのソフトウェアエンジニアの年間報酬中央値は50万ドル(約8000万円)を超える。その労働の一部でもソフトウェアで置き換えられるなら、シタデルのような企業は莫大なコストを削減できる。それでもグリフィンは、かつてはそうした人々にしかできなかった仕事を機械がし始めていることに気落ちして帰宅したと語った。

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翻訳=酒匂寛

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