動物があくびをする理由:現時点で有力な二つの説
2007年に『Evolutionary Psychology』に掲載された論文で、アンドリュー・ギャラップとゴードン・ギャラップ・ジュニアの両氏は、それまでの通説とは根本から異なる枠組みを提唱した。それは、「あくびは脳を冷やすメカニズム」という説だ。
今では、温度制御説、あるいは「温度域仮説」と呼ばれるこの説では、あくびは脳の温度上昇によって引き起こされると考える。より温度の低い外気を深く吸い込むことが、熱交換器の役割を果たし、脳が機能するのに最適な温度の範囲に戻すよう促す、というのだ。
研究者たちが実験で集めたエビデンスは、注目に値する。ある実験では、被験者のうち鼻呼吸をした者のあいだでは、人から人に移るあくびは一度も発生しなかった。鼻呼吸については、静脈のネットワークを通して脳を冷やすことが知られている。
一方、口呼吸をしていた被験者は、観察された時間のうち約48%にわたってあくびをしていた。また、もう一つの脳の温度制御ルートとして知られている、おでこを冷やす方法でも、鼻呼吸と同様に、あくびを抑える効果が生じた。
これらの結果からは、脳が他の手段ですでに冷やされている時には、あくびという反射は必要がない、という結論が導き出される。
2013年に『Frontiers in Neuroscience』に掲載された、温度制御説を検証するレビュー論文で解説されているように、2007年の論文に続くかたちで、脳内の温度を直接計測した研究結果がいくつか発表された。これらの研究で研究者たちは、温度を計測するプローブをラットの前頭葉に埋め込み、あくびが発生するタイミングが、脳の温度が一時的に上昇する時と完全に一致していることを発見した。さらに、あくびの後には、脳の温度が基準値に戻っていることも確認したという。これは、この分野で得られる中でも、最高レベルに明確な生理学的な研究結果と言えるだろう。
さらに現地調査により、この説には新たな裏付けが加わった。アリゾナ州ツーソンで、歩行者たちを異なる季節に観察したところ、あくびをする頻度が、冬になると夏と比べて跳ね上がることが判明した。これはまさに、温度域仮説から予測される結果だ。外気温が体温と同程度、もしくは上回っている場合は、外気を体内に取り込んでも冷却効果は得られない。ゆえに、脳を冷やすあくびの反射は抑制される。ここからわかるように、温度制御という見地から見ると、あくびは、体内よりも外気の方が温度が低い時にしか意味をなさない行為ということだ。


