キャリア

2026.06.18 13:15

片山大臣の英語テクニック、彼女はダボス会議の発言で「異文化の溝」をどう埋めたか

(写真は"The 2026 IMF/World Bank Spring Meetings"から、Getty Images))

(写真は"The 2026 IMF/World Bank Spring Meetings"から、Getty Images))

片山大臣ダボス会議の英語、「行間幅切り替え」「結論繰り返し」の妙【原文引用】 では、2026年1月に行われたダボス会議で片山さつき財務大臣が参加したディスカッション(Japan's Turn)から、国際交渉のコンサルティングを行うYouWorld代表取締役の松樹悠太朗氏が、日本のビジネスパーソンが学べるポイントについて考えた。本稿はこれに続く考察である。


前回の記事「片山大臣ダボス会議の英語、『行間幅切り替え』『結論繰り返し』の妙【原文引用】」では、片山さつき大臣によるダボス会議公式セッション「Japan's Turn」でのディスカッションを題材に、「発音」とローコンテクスト流の「構成」について掘り下げた。

本稿では、その構成の中でも<本論>に焦点を当てる。<本論>は英語における「ストレートな表現」を支える重要な要素であり、相手に分かりやすく考えを伝えるための土台となる。

まずは<本論>の定義から確認しておこう。

<本論>とは、<主張>や<結論>に至る理屈を示し、それを支える部分である。聞き手が「なるほど、だからこの<主張・結論>になるのか」と、その理屈を自然に追えることで、無理なく納得が生まれる。したがって、<本論>には誰にとっても理解しやすい内容が求められる。

数字を使った本論テクニック 

まずは数字を使う「分かりやすい<本論>作り」を解説しよう。数字を用いることは、英語だけでなくビジネスシーンにおいても非常に活用しやすいテクニックの一つである。

Japan's turnと題されたディスカッションではいくつか主だった議論があったが、数字を使った片山大臣の返答は、文字通り模範解答のような返答であった。筆者の指導現場でも、このような回答・プレゼン・メールを作れるようになることを一つの目標としている。

場面は、日本の借金と国債市場についての議論である。ファシリテーターのギデオン・ラックマン氏は次のような趣旨の質問を行った。

日本政府は経済活性化のためにさまざまな政策を進めているが、防衛費増加も含め多くの財源が必要となる。その中で「日本の借金は大丈夫なのか」と不安視する声もある。特に債券市場の関係者に対して、何を伝えたいか。(原文は後述 ギデオン・ラックマン氏 質問1 の通り)

この質問に対し、片山大臣は次のように回答した。(以下要約。実際のディスカッション内容・原文は後述 数字を使った本論テクニックとして の通り)

背景:昨年10月から、金融・年金・保険・機関投資家などと、日本財政を長期的に持続させる方法について議論してきた。

背景・本論①:直近2回の経済対策では、国債(借金)への依存度を以前より低く抑えることができた。景気対策に必要な資金を、以前ほど借金に頼らず確保できている。

背景・本論⓶:今回の政策では、借金による調達割合は24%となり、前回より10%低下した。

背景・本論③:さらに今年の支出規模は、対経済規模で比較するとG7諸国の中でも最も低い水準にある。

結論:日本経済は持続可能性を維持できる。そして必要な部分にはしっかり投資しながら、それを実現している。

この回答で上手に数字を使った点は以下の通りだ。

1.昨年10月から

「時間をかけて議論してきた」と言う代わりに、約5か月という具体的な期間を示している。

2.10%低下

「借金依存を減らした」ではなく、「10%低下した」と示すことで、変化量を具体的に伝えている。

このように、片山大臣は手元の数字を用いて、自身の考えやメッセージの輪郭を明確にしていた。

次ページ > 重要なのは聞き手にとって理解しやすいかどうか

文=松樹悠太朗 編集=石井節子

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事