米運輸省傘下の連邦海事局(MARAD)が、小型モジュール炉(SMR)を用いた原子力電源の商業船舶への導入によって米国の海運業界を変革する可能性を検討している。
ショーン・ダフィー米運輸長官は今月7日、商船向けSMR開発イニシアチブを発表し、民間企業や開発業者に協力を呼びかける情報提供要請(RFI)を行った。「米造船業界の未来を確実にするためには、イノベーションが必要だ。業界の専門家や既成概念にとらわれない発想を持つ人材と協力し、強力なSMRモデルを開発することで、コスト削減と国家安全保障の強化を実現する最先端のエネルギー源を提供する」としている。
国際原子力機関(IAEA)の定義によると、SMRは1基あたりの電気出力が最大30万kWの先進的な原子炉だ。
米連邦政府はエネルギー需要に応えつつ近代化を図るためSMRの開発を推進し、助成プログラムや数多くの開発プロジェクトを実施している。米軍も商用マイクロリアクターの導入を目指して複数のプロジェクトを進行中だ。
米エネルギー省は、SMRの利点として「設置面積が小さいこと、設備投資が低コストで済むこと、大型原発を建設できない場所にも導入可能なこと、段階的な出力増強に対応できること」を挙げている。
MARADは、米沿岸警備隊(USCG)、原子力規制委員会(NRC)、エネルギー省と協働してSMRの開発を進めている。
「SMRの導入を成功させるには、単なる技術実証ではなく、システム転換という視点で捉える必要がある」と、スティーブン・カーメル海事局長官はダフィーとの共同発表で説明。「体系的な不確実性を低減し、規制構造を調整し、民間の資本や事業者がこれらの画期的な技術を拡張するにあたって必要となる市場環境を整えるために、政府に何ができるか。こうした観点で重要な知見を求めている」と述べた。
MARADは8月5日を回答期限として、商業的に実現可能なシステム主体のSMRコンセプトを開発するための情報提供要請(RFI)を発出した。責任の枠組み、保険加入、港湾での受け入れ、人材育成といったシステムアーキテクチャや、SMRを就航中の船舶に統合する方法を実証する単一の船舶ないし技術全般に関するプロジェクトを対象としている。
物流業界への影響は
MARADは「SMR推進システムの導入可能性を、システム転換という観点で捉えている」とRFIで明言。「世界の競合国は、造船所、港湾、保険制度、物流ネットワークを含む広範な海事産業への原子力推進システムの統合を進めており、米国もSMRの国内開発を行わなければ戦略的に不利な立場に置かれることになる」と警鐘を鳴らした。
この取り組みにより、造船・物流業務へのSMR統合に向けてMARADと提携した新規事業開発が生まれそうだ。トランプ政権は原発プロジェクトへの企業投資を積極的に呼び込んでおり、米運輸省の新たなイニシアチブはその最新事例となる。



