マーケティング

2026.05.28 09:41

マーケティングにおけるAI活用の本質──判断は人間、実行はエージェント

ロバート・バーコ氏は、現代のマーケティング業務に特化したデジタルマーケティング代理店Elite DigitalのCEOである。

advertisement

マーケティングにおけるAIに関する議論の多くは、今でも同じ問いから始まる。AIは人間に取って代わるのか、と。

デジタル代理店内部でエージェント型AIパートナーを構築し、活用してきた経験から言えば、この問いの立て方は本質を見誤っていると考える。変化しているのは「置き換え」ではなく、AIがチームメイトのように機能するほど高速に動けるようになったときの業務分担のあり方だ。

マーケティングの未来は、人間対AIではない。人間の判断力とエージェントの実行力を組み合わせることだ。

advertisement

Elite Digitalでは、Elie(Elite Intelligence Engineの略)と呼ばれる社内システムを構築した。全員がアクセスできる。Elieはデータを分析し、提案を行い、変更案を提示し、アイデアを検証できるが、何かを公開したり、クライアントと直接やり取りしたりすることはできない。何を発信し、何を伝えるかについては、人間が責任を負い続ける。

この境界線は意図的なものであり、我々が学んだ最大の教訓の1つだ。

エージェントが業務の形をどう変えるか

アシスタントは個人の生産性を向上させる。要約やブレインストーミングを高速化する手助けをする。

エージェントは業務の形そのものを変える。なぜなら、複数のステップをまたいで機能するからだ。パフォーマンスデータをレビューし、仮説を生成し、選択肢の草案を作成し、リスクを指摘し、次のアクションを提案する──これらを一連の動作で行う。制作が容易になると、判断が制約要因となる。

優秀なアナリストでも見逃しかねないインサイトをエージェントが発見するとき

エージェント型AIに対する私の考え方を変えた最初の瞬間の1つは、Google広告のレビュー中に起きた。

優秀なアナリストは、どこを見るべきかを知っている。課題はスキルではなく、時間と対象範囲だ。アカウントには何千もの変動要素があり、優秀なチームでさえ優先順位をつけざるを得ない。最も重要な部分をスキャンし、シグナルが最も強い箇所を深掘りし、次に進む。

Elieは同じアカウントに異なるアプローチで臨んだ。広範囲を一貫してスキャンする忍耐力を持ち、人間が通常は別々にレビューする領域をまたいでパターンを結びつけた。特定のクエリパターンと時間帯に関連する非効率性の領域を発見した。ダッシュボードから飛び出すほど劇的ではなかったが、重要性は十分にあった。

人間が発見不可能なものではなかった。しかし、チームがあらゆる糸口を追う無限の時間を持つことは稀だ。Elieはデータから仮説への道のりを圧縮し、それがミーティングを変えた。我々は診断を超えて、より良い意思決定へと進んだ──次に何をテストすべきか、どのトレードオフを受け入れるべきか、最も賢明な戦略的賭けは何か。

価値を簡単に表現するなら、こうだ。エージェントはインサイトへの到達速度を高め、人間は対応の質を高めた。パフォーマンスが向上するのはそこだ。AIが「優れている」からではなく、熟練したチームにより明確さとより多くの時間を与え、より良い判断を下せるようにするからだ。

エージェントの提案が正しく聞こえても、市場の文脈を見逃すとき

別の瞬間が、パートナーシップのもう一方の側面を教えてくれた。

Elieは表面的には優れたキャンペーンアイデアを生み出した。キャンペーンはブリーフに沿っていた。メッセージは戦略に合致していると感じられた。実行はクリーンだった。アウトプットを単独で評価するだけなら、前に進めるのは容易だっただろう。

しかし、何かが既視感を覚えさせた。

市場で起きていることに対してアイデアを検証したとき、キャンペーンの方向性が競合他社がすでに所有している領域に漂流していることが明らかになった。Elieは無謀な提案をしたわけではない。単に、人間が経験から構築する競合の文脈を持っていなかっただけだ。

これが、人間の役割が不可欠である理由だ。マーケティングは差別化に関するものだ。タイミングだ。何が新鮮に感じられ、何がリミックスに感じられるかを知ることだ。

この瞬間はまた、多くのチームが苦労して学ぶことを強化した。AIはデフォルトで同意的であることが多い。自信を持ってアイデアを検証でき、自信は正しさと誤解されることがある。それが、戦略的に弱いか一般的な、洗練された作業がすり抜ける仕組みだ。

そこで我々はエージェントの使い方を変えた。答えを生成するものとして扱うのをやめ、挑戦されなければならないスパーリングパートナーとして扱い始めた。

パートナーシップ──AIの思考を押し進めると同時に、AIがあなたの思考を押し進める

社内では、AIは魔法の杖のようなものだが、人間が魔法使いだと言っている。杖はスキルを増幅するが、それを置き換えることはない。

実際には、Elieを2つのモードで使用している。自社の内部AIエージェントを次のような方法で使用することを検討してほしい。

第一に、加速装置として。AIエージェントはパフォーマンスを迅速に分析し、変化を要約し、異常を発見し、テストアイデアを提案できる。これによりチームはより高いベースラインから始められる。

第二に、検証ツールとして。我々はElieに我々のコンセプトを批評し、弱点を特定し、反論を提案するよう求める。また、その推奨事項に反論し、それを擁護させる。同じテーマのバリエーションではなく、意味のある形で異なる代替案を求める。これが、同意的なシステムを有用なパートナーに変える方法だ。

予想外の利点の1つは記憶だった。人間は詳細を見逃す。マーケティング業務は数カ月、数年にわたって積み重なるからだ。メールスレッドのニュアンス、数カ月前のミーティングでの制約、何気なくなされた小さな約束──これらはチームが迅速に動く中で抜け落ちる可能性がある。エージェントはこれらの詳細を常に念頭に置き、何も抜け落ちないようにする手助けができる。ただし、人間が意思決定を所有し続ける限りにおいてだ。

リーダーが学ぶべきこと

エージェント型AIはマーケティングを高速化する。その部分は避けられない。

より困難な部分、そして真の優位性は、スピードが品質、差別化、説明責任と並行してスケールするように、人間とエージェントのパートナーシップを設計することだ。それには、エージェントが提案できることと人間が承認しなければならないことの明確さが必要だ。盲目的な受け入れではなく、批評を強制する習慣が必要だ。人間が発信するものに対して責任を負い続ける文化が必要だ。

エージェント型AIをプロセスに成功裏に組み込むには、エージェントの実行と人間の判断を組み合わせ、魔法の杖が魔法使いをより良くする運用モデルを構築する必要がある。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事