あるいは、ロシア国民は物価高騰に嫌気がさしているのかもしれない。ウクライナ侵攻開始以来、欧米による対ロシア制裁の影響で物価は着実に上昇してきたが、当初は巨額の政府支出によって経済への打撃が覆い隠されていた。だが、賃金はインフレに追いついておらず、今年初めには小売価格が平均で2.3%上昇した。
ロシア政府にとってさらに深刻なのは、世論調査によると、国民は15%程度物価が上昇したと感じている点だ。4月の調査では、回答者の半数以上が物価上昇は「極めて著しい」と回答し、30%が「中程度」だと答えた。
このようなさまざまな要因が渦巻いているものの、ロシア人の不安の真の根源は、国民の間で広く浸透しているメッセージアプリ「テレグラム」や仮想私設網(VPN)の遮断を含むインターネット規制にある。この措置は25年5月に本格的に開始されたが、26年4月以降、頻度と範囲が拡大している。
これまでウクライナ侵攻を熱烈に支持していたロシアのインフルエンサーでさえ沈黙を破り、プーチン大統領を取り巻く国家の首脳部を暗に批判し始めた。これはウクライナ侵攻ではなく、インターネット遮断こそが、大統領支持率低下の決定打だったことを示している。特に中小企業は深刻な打撃を受けており、顧客との連絡を維持することができなくなっている。政府によるインターネット遮断は集団的懲罰に他ならず、政権の反対派や抗議団体だけでなく、社会全体に負の影響を及ぼしている。
ロシアはかつて、特定のプラットフォームやウェブサイトを遮断する「ブラックリスト方式」を採用していた。だが、現在は「ホワイトリスト方式」に移行し、政府はインターネットに対する支配力を強化するため、ごく一部を例外として残す以外は、ほぼすべてのサービスを遮断している。
インターネット遮断は極めて抑圧的な権威主義体制の象徴だ。イラン政権は選挙や抗議活動のたびに遮断を命じているほか、ガボンは軍事クーデター後に、キューバは抗議活動後に同様の措置を取った。キューバでは部分的なインターネット遮断が常態化している。ミャンマーも負けじと、世界で最も厳格なインターネット規制を敷いている。
こうした措置は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)以降、世界中で拡大している。21年には34カ国で182件のインターネット遮断が発生したが、25年には52カ国で少なくとも313件の遮断があり、損失の規模は数十億ドルに上った。ある調査によると、19~21年の間に46カ国で発生したインターネット遮断により、205億ドル(約3兆円)以上の損失が生じた。
ロシア政府は公式に、ウクライナ軍の無人機がロシア国内のモバイルネットワークを利用することを防ぐために、インターネットやメッセージアプリを遮断せざるを得ないと説明している。他方で、これは一般市民に多大な影響を及ぼしており、電子決済や衛星ナビゲーション、現金自動預け払い機(ATM)、配送サービス、在宅勤務、銀行業務、そして日常の通信に支障を来している。


