AI

2026.06.06 13:30

AIの進化で問われる「会社や組織の意義」、5つのキーワードで読み解く

AIがもたらすのは仕事の効率化ではない。その仕事や事業がなぜ必要なのかという本質的な「問い」だ。AI時代の課題に正面から向き合い、解を導き出し、意思を伝えながら組織を変革できる企業が次代の勝者となる。

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「AIはビジネスをどう変えるのか」「AIは人間の『同僚』になれるか」──2026年1月、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(通称「ダボス会議」)で、AIは最重要アジェンダのひとつであり続けた。AIが描く社会の輪郭、私たちのビジネスや日常に訪れる具体的な変化、AI開発のタイムラインなど、扱うテーマは多岐にわたった。

2年前のダボス会議では、核となるキーワードは生成AIだった。今年のダボスで議論の中心を担ったのは、ユーザーの代わりに目標を追求し、タスクを完了させるソフトウェアシステム「エージェンティックAI」である。

Visa(ビザ)のライアン・マキナニーCEOはダボス会議2日目に開かれたセッション「ScalingAI: Now Comes the Hard Part」(AIのスケーリング:ここからが本番)のなかで、エージェンティックAIが購入から決済までを自律的に行う「エージェンティック・コマース」をデジタルコマースの第3の波と位置づけ、「26年以降、真のエージェンティック・コマースへのシフトが始まる」と断言した。

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医療の分野においても、エージェンティックAIへの期待は高まるばかりだ。ロイヤル フィリップスのロイ・ヤコブスCEOは、エージェンティックAIは、医療業界が直面している慢性的な人材不足に活路を見いだす可能性があると期待を込めた。

ただし、変革の道のりは容易ではない。エージェンティックAIを活用して大胆なイノベーションを起こすためには、医療にまつわる広範なプロセスそのものを再構築する必要がある。「今あるやり方を根本から見直すことが大きな変化であり、最大の課題だろう」(ヤコブス)。

米スタートアップ企業OpenAIがChatGPTをリリースしてから3年以上が過ぎた。日本国内でも、大企業を中心に生成AIやエージェンティックAIを職場に導入する動きが広がっている。ここから先は、新たなツールがもつ力を、企業の持続的な成長や価値の創出につなげられるかどうかが勝負の分かれ目になる。

ボストン コンサルティング グループ(BCG)が25年9月に発表したリポート『The Widening AI Value Gap: Build for the Future 2025』では、AIによるイノベーションの最前線に立ち、最先端のAIの機能を体系的に活かし、大きな価値を持続的に生み出している「未来型企業」は世界的に見ても5%に過ぎないとしている。この調査結果は、多くの企業でAIはいまだ「効率化のためのツール」にとどまるという現実を映し出している。

BCGのクリストフ・シュバイツァーCEOはダボス会議3日目に開かれたセッション「The Intelligent Co-Worker」(賢い同僚)で、企業のAI導入を成功に導くためには人々の働き方を変える必要があり、そのためには組織のあり方、仕事のプロセス、インセンティブ、スキル、リーダーシップ、カルチャーを見直す必要があると主張した。

前述のリポートによると、いち早くAIの導入に本気で着手した「未来型企業」の過去3年間の株主総利回り(TSR)は、AIの導入が遅れている企業のおよそ3.6倍だという。26年は、単にAIを使っているだけの企業と、AIの導入を機に事業や組織の大胆な変革を実践している企業を、市場がより厳しく選別する年になりそうだ。

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文=瀬戸久美子 イラストレーション=ジェームス・ジリアード

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