AI時代に求められる「問う力」とは
その過程で磨かれるのが「問う力」である。この言葉にはふたつの意味が含まれている。ひとつは、AIを賢く使いこなすための問いかけ方。もうひとつは、向き合うべき問いの本質を見極める力だ。
AIはプロンプト、つまり人間が投げる問いかけによって出力の質が大きく変わる。表層的な「浅い」質問には、ありきたりな答えしか返ってこない。ツールの使い方を学ぶ前に、問いかける力を磨く。その順序を間違えると、AIは単なる高性能な検索エンジンに成り下がりかねない。
一方で、問いをうまく描くことと「何を問うべきかを知っている」ことでは、求められる能力が異なる。 前者はスキルとして習得できるが、後者は自分の仕事の目的や文脈に対する深い理解が欠かせない。例えば、業務の課題を解決するためにAIを活用するとする。その場合、「なぜ、その課題が発生しているのか(Why)」や「本当に解くべき課題は何か(What)」を深掘りする必要がある。
本特集の取材でも、「AI時代こそ、自ら問いを立て、その本質を見極める力が求められる」との声が複数聞かれた。現場でAIを活用しながら自分やチームの業務のあり方を問い直すプロセスそのものが、社員の主体性を育てる。そう期待を寄せる企業は多い。
社員とともに変革の機運を高めるのと同時に、経営者層はより核心的な問いに直面している。それが「AI時代における会社や組織、仕事の意義は何か」という根源的なテーマだ。
「インフラを担う企業の存在価値が一層高まる」「企業には、社会の公器としての役割がより強く求められるようになる」。特集で取材したリーダーたちからは、さまざまな意見が聞かれた。共通していたのは、これからの組織は「パーパスと価値観に共鳴する者が集うコミュニティ」としての意味合いが高まるだろうという点だ。
自社の事業や取り組みに社会的・倫理的な妥当性を与え、ステークホルダーの信頼を獲得し、最終的な責任を担う。これができるのは人間だけだ。「なぜやるのか」「本当に実現したいことは何か」を突き詰めて考え、自らの意思を語る。ここに、AI時代の経営者やリーダーの仕事の核心がある。
AIが企業にもたらす最大の変化は、業務の自動化や効率化ではない。人間が組織のなかで何を担い、企業活動を通じてどんな未来を実現したいのかを再考させることだ。問いを持続的な成長のエネルギーに変え、組織変革を実践する企業こそが、次の時代の主役となる。


