女性が“嫌いな女性”をたたく番組から、今を生きる女性に寄り添う番組へ──。前身番組の大枠を維持したまま、真逆のコンセプトで鮮やかに変貌を遂げた「上田と女が吠える夜」。姉妹番組「上田と女がDEEPに吠える夜」も含め、企画・演出を手がけるのは、“フェミニストのテレビ屋”こと前川瞳美。男性中心のテレビの制作現場で、彼女はいかにして変革を起こしたのか。
「かつての私はミソジニーでした」
前川の口から出たのは、意外な言葉だった。油絵専攻の美大生時代、ジェンダーギャップを感じたことは一度もなかったという前川が、女性を蔑視する側に立つようになったのは、社会に出てからだ。
会議の場で、自分の意見は聞き入れられなかったのに、同じ意見を年配の男性が出したら採用された。社外の人が、男性プロデューサーには挨拶するのに、隣にいる自分は目も合わせてもらえなかった。
「すべては自分に力がないせいだと思い込んでいました。未熟さを補うために、時には男性の機嫌をうかがい、女性としての愛嬌も使いながら結果を出すのが“うまい生き方”だと思っていたんです」
その言葉には、時代の空気がにじむ。「上田と女が~」は、2017年に前川が立ち上げた当初は「女が女に怒る夜」というタイトルで、「女とは、女が許せない生き物である」というキャッチフレーズを掲げていた。そういう構図にすれば「男性は喜ぶだろう、という心理がどこかにあった」と前川は振り返る。
しかし、フェミニストを自称する漫画家・瀧波ユカリに出会い、意識が変わる。
「瀧波さんいわく、『フェミニズムはビンゴゲームみたいなもの』。女性に生まれた時点で真ん中の穴は開いていて、不当な扱いを受けるたびに穴が増え、何かのタイミングで列が揃うのだと。当時の私も、穴はいくつも開いていたんです」
私はフェミニストなんだ──4年前に「ビンゴ」が揃い、覚醒した前川は、番組を“女性VS.女性”のバトルから、現代女性の生きづらさに向き合う場へと転換していった。興味深いのは、その転換の仕方。男性MCと女性出演者たちがそれぞれの目線から語り合うという従来の番組構造はそのままに、取り上げる内容をフェミニズム寄りに「ぬるっと変えていった」(前川)。



