韓英志は2021年4月、内装工事会社のユニオンテックのIT部門をMBO(経営陣買収)し、クラフトバンクを設立した。同社は工事会社向け経営管理 SaaS「クラフトバンクオフィス」を展開。打刻や日報、案件・スケジュール確認などの現場の事務作業を、対話アプリ「LINE」のIDを介して利用できるもので、21年の提供開始から4年で47都道府県の建設業全29工種に導入が拡大。1万7000人以上の職人が利用している。
Angel Bridgeの八尾凌介は、23年9月のシリーズAから同社にリード投資家として参画。25年10月のシリーズBでは追加投資を行った。その理由とは。
八尾:建設という巨大でDXが遅れている市場には、もともとポテンシャルを感じていました。そのなかで、投資の決め手となったのは、聡明でありながら相手の懐にスッと入り込める韓さんのストリートスマートさと、現場の痛みを深く理解する事業解像度の高さです。韓さんはリクルートでグローバル事業開発室長まで務めた後、建設業に飛び込み、内装工事の実務を担いながらMBOした経歴をもっています。建設業に変革を起こせるのはこの人しかいないと確信しました。
韓:リクルートでドイツに駐在していた17年ごろ、M&Aをした現地スタートアップを通じてAIがフル活用されている現場を目の当たりにしました。「シンギュラリティが近いうちに起き、一般的なホワイトカラーの仕事はなくなる」と確信し、長期的に残るのは現場でのモノづくりだと考えて建設業に転じた経緯があります。しかし、私が参画した内装会社は収益構造に課題を抱え、経営基盤がぜい弱な状態でした。そこでデジタルテクノロジーを駆使して仕事を回す仕組みをつくったところ、利益率が15%に跳ね上がり、儲かる仕組みをつくることができました。ただ、周りの業者さんを見渡してみると変革が遅れている現実があり、これがクラフトバンクを立ち上げるきっかけになりました。
八尾:驚かされたのは、現場の懐に深く飛び込んだ顧客接点のつくり込みです。全国約20万社の専門工事会社にリーチするために、泥くさくチャネルを構築している。例えば、職人同士をマッチングする交流会「職人酒場」は、単なる飲み会ではなく、職人同士が信頼できるビジネスパートナーを探すための「婚活パーティ」のような熱狂的な雰囲気で、度肝を抜かれました。過疎地域の都市でも80社ほどが集まる盛況ぶりで、週1回ペースで全国展開している。これをやり切れるITベンチャーはほかにありません。



