手を使う効果といえば、最近こんな愉快な話を聞いた。僕がパーソナリティを務めるTOKYO FMの「日本郵便 SUNDAY’S POST」のゲストに、ヴァイオリニスト・鷲見恵理子さんがいらした。
鷲見さんの祖父は「日本ヴァイオリン界の父」と称される鷲見三郎さんで、鷲見さんご自身も中学2年生で単身アメリカに渡り、ジュリアード音楽院へと進学。カーネギーホールのコンサートでデビューを果たし、その後はミラノに移住したそうだ。
ミラノでは貴族のマダムからサロン演奏に誘われる。昔で言うところの宮廷音楽家みたいなものだろう。その演奏の場には上流社会のさまざまな人がおり、それが次なる演奏の機会につながっていく。「日本だと国際コンクールに来たマネジャーの目に留まれば、場が開ける。ヨーロッパ留学では、日常的に偶然の出会いから開けていく」と鷲見さんは語っていた。
さて、ご両親の体の不調に伴い、40歳で帰国した鷲見さんは、飲食関係でアルバイトをしようとした。検索で引っかかったのが「貴族」という言葉。「ここなら自分の経験を役立てるかもしれない」と、自らのCDも携えて面接に向かったところ、そこはなんと「鳥貴族」だった(笑)。
店長に面白がられて雇われた鷲見さんは、焼き鳥の串刺しや、つくねのひき肉をこねる作業に従事。その結果、指先が鍛えられ、演奏がよりスムーズになったと実感したそうだ。そんなバカな!
今月の一皿
全国チェーン展開の「鳥貴族」のつくねからインスピレーションを得た、料理人ゴロー氏によるオリジナルつくね。

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都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。
小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務めた。


