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サイエンス

2026.06.03 12:30

なぜヒトに眉毛があるのか、汗を防ぐだけではない驚くべき機能

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眉のこのような動きは、迅速かつ低コストに生み出せるシグナルであり、しかも、相手との距離や周囲の明るさにあまり左右されない。さらに重要なのは、こうした眉の動きは自然に起こるため、社会集団の内部で信頼を維持するのに役立つことだ。

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先述した2018年の研究は、眉が新たな機能を担うようになったことを、協力傾向と社会的寛容さの増大という、より広い進化的トレンドの中に位置づけている。つまり、ヒトの集団がより大規模に、より相互依存的になるにつれ、微妙な情動状態を伝える能力が価値を増したのだ。このようにして、(初期人類の眼窩上隆起が伝えていた)優位性や攻撃のシグナルだけでなく、情動のシグナルも伝達できる顔の方が有利になった。

こうした観点からは、眉の形成はインターフェース再設計の一環であり、ヒトの顔が、威圧的なものから、感情を読み取りやすいものへと変化するなかで起こったと解釈できる。

眉と顔認識

ヒトの顔がよりオープンで解読しやすいものになるにつれ、他者の顔を迅速かつ正確に識別する能力もまた重要性を増した。相互依存する小規模集団において、誰が友人で誰が赤の他人か、誰が敵で誰が味方かを見分ける能力は生死に直結した。また、評判や過去の相互作用を記憶し、リアルタイムで適切に反応することも必要不可欠だった。顔認識が、社会のインフラの根幹となったのだ。

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2003年に学術誌『Perception』に掲載された論文で、研究者たちは、眉が顔認識に果たす役割を検討した。この研究の結果は、いま見ても実に意外だ。研究チームは、米国の元大統領であるリチャード・ニクソンや、女優のウィノナ・ライダーといった有名人の顔写真に「Adobe Photoshop」を使ってデジタル加工を施し、眼または眉を消去した。そして、これらの写真を実験参加者に提示して、誰の顔かを答えさせた。

直感的には、眼のない写真の方が、正答するのが難しいと思うだろう。なにしろ、眼は顔の中で最も情報量の多いパーツであると、しばしば形容される。ところが、結果は正反対だった。眉を消去したときの方が、眼を消去したときよりも、正答率が大きく低下したのだ。

この結果は、眼と眉がそれぞれ異なるタイプの情報を伝えていることに関係している。眼はディテールが豊かで、動きや、まばたき、視線方向などが刻々と変化する。だが、このように変化に富んでいるからこそ、安定した個人識別マーカーとしては、あまりあてにならない。一方、眉は眼よりも特徴が一貫しており、コントラストが顕著で、形の情報が伝わりやすい。眉の太さ、曲がり具合、間隔、対称性といった情報は、個人に固有の署名的特徴といってもいいくらいだ。

それらはまた、顔の上半分の「幾何学的構造」を決定づける上でも、極めて重要な役割を果たしている。目と眉のあいだの距離、アーチの傾斜角、そして左右のバランス──これらの要素のすべてが、研究者たちの言うところの「全体的布置処理(configural processing)」に貢献しているのだ。全体的布置処理とは、それぞれのパーツが持つ「空間的な位置関係」に基づいて顔を認識する、脳の高度な認知能力のことだ。

眉を消去すると、こうした図形的情報が完全に崩壊するため、たとえ眼はそのままでも、顔の「解析」が困難になる。この知見は、眉はまるで「アンカー(錨)」のように、顔を安定させることを示唆している。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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