──関係構築のツールは、具体的に再生プロセスのどの段階で活きてくるのでしょうか。
山口:まさに、法的整理に行き着く手前の「より早い段階(アーリーステージ)」でサポートに着手できる点にあります。業績が本格的に悪化し始める前の兆候を捉えたタイミングや、あるいは一度苦境を経験した企業が再成長する段階。この局面で、貸し手であるレンダーと、借り手である事業者が、危機感の目線をしっかりと合わせるためにこのツールを使います。
お互いが同じ目線に立つことができれば、再生のスピード感は劇的に高まります。最後の出口として事業譲渡を選ぶにしても、早い段階から「一緒により良いスポンサーを探しにいこう」と動くことができます。結果として、スポンサー選定の選択肢も広がりますし、リードタイムを大幅に短縮したスピード感のある再生が可能になるのです。
「最後は事業を守る」──新制度がもたらすレンダーガバナンスの「武器」
──企業価値担保権を実行する段階では、銀行側が「事業譲渡」をハンドリングできる権利も含まれますよね。
山口:言い方を変えれば「事業譲渡を求めることができる権利」と捉えられるかもしれません。しかしそうではなく、我々としては、その権利を実際に「行使する」ことよりも、「一定の強い権利を銀行が持っている」という事実自体が重要だと考えています。
これまでの金融機関のモニタリングにおいて、レンダーガバナンス(貸し手による規律)を利かせるための実効性のある武器はありませんでした。だからこそ、入口の段階から「最後は我々が事業を守る権利をお互いに認識していますよね」という前提を共有しておく。
また、「債権放棄」や、収益性のある事業だけを新会社に移管する「第二会社方式」など出口フェーズと、この担保権は非常に親和性が高いです。こうした局面では、企業との「情報格差をなくすこと」と「レンダーガバナンス」が不可欠です。入口からこの担保権を通じて深く関わっていれば、情報格差は縮小させられます。そのため、足並みが揃いにくい緊迫した局面でも、ゴールに向けて関係者をスピーディーに一本化して引っ張っていくことができます。


