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2026.06.09 15:15

原作発表から37年 池上高志と岡瑞起が語る「攻殻機動隊」と人工生命

「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」のトークに登壇した理学博士の池上高志(左)と工学博士の岡瑞起(右)

「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」のトークに登壇した理学博士の池上高志(左)と工学博士の岡瑞起(右)

士郎正宗による原作漫画が発表されたのが1989年。それから、押井守の映画、神山健治のテレビアニメ「STAND ALONE COMPLEX」シリーズ、荒牧伸志の「SAC_2045」まで、複数の監督が複数の作品として「攻殻機動隊」を受け継いできた。長寿コンテンツというだけなら、枚挙に遑がない。

それら多くのシリーズと違うのは、この作品が終わらない問いを抱えていることだと思う。作品世界では、機械の身体に宿る人間の魂や意識のことを“ゴースト”と呼ぶ。そのゴーストは、機械に移植できるのか。コピーされたゴーストは本物か。ネットの上に知性は宿るか。機械と生命はどこで分かれるのか──。

1989年に立てられたその問いは、2025年になってもまだ更新中で、答えが出るたびに新しい問いが生まれてくる。問いの賞味期限が切れないのだ。

虎ノ門ヒルズのTOKYO NODEで先ごろ閉幕した「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」は、その現象の一つの結晶だった。全アニメシリーズを横断する資料展示を軸にしながら、展覧会は「この作品を起点に自分の関心を語る」人々を次々と呼び込んだ。

会期中には、さまざまな分野の書き手や研究者、作り手を招いたトークシリーズが組まれた。人工生命研究者の池上高志と岡瑞起、メディアアーティストの落合陽一と草野絵美、小説家の円城塔、批評家のドミニク・チェンと鳴海拓志などが登壇。夜になると会場の性格そのものが切り替わり、真鍋大度やNight Tempo、YOSHIROTTENたちによる音楽と映像の没入体験「REFLEX」が展開された。

知的拡張と感覚的拡張の二層が、同じ会場に重なる。企画展というより、一つのIPが35年かけて呼び寄せた磁場の可視化だった。

そんなことを、会場でぼんやり考えていたとき、隣では、東南アジア系とおぼしきカップルが翻訳アプリを使って、日本語のセッションをリアルタイムで英語に変換しながら聞いていた。イヤホンを片耳ずつ分け合って、2人でスマートフォンを覗き込みながら。その光景が、作品の中で描かれた未来に、妙なほど近かった。

「AI人工生命・ネットワークが生み出す新たな知性」をテーマに据えた池上と岡のセッションは、しかし笑いとともに始まった。

岡が、池上のAmazonレビューのアカウント名が「フチコマ」だと暴露したのだ。フチコマとは、攻殻機動隊に登場するAI搭載の小型多脚戦車だ。「池上さんが攻殻機動隊好きなんだなって思ったのは、私が本を出したときに最初にレビューを書いてくれた人がフチコマっていう名前で、聞いたら俺だよって言われて」と岡は笑った。

池上は涼しい顔をしていた。人工生命研究者のアカウント名が多脚戦車というのは、ある意味で非常に筋が通っている。

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文・写真=青山鼓

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