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2026.06.09 15:15

原作発表から37年 池上高志と岡瑞起が語る「攻殻機動隊」と人工生命

「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」のトークに登壇した理学博士の池上高志(左)と工学博士の岡瑞起(右)

【問い1】LLMは、35年前の仮説を証明しはじめているか

池上が人工生命の研究を続けてきたのは、一つの確信があるからだ。「人工的であっても、システムがバカでかくて自律的であったら、そいつは生命になり得る」。

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1980年代からそう言い続けてきた。周囲にはなかなか信じてもらえなかっただろうと想像するが、それをSNSが登場した時期から研究してきた岡も、当初は半信半疑だったと言う。

「池上さんと出会った頃、SNSに生命性が宿っているかどうかを調べようって言われて。ちょっと頭おかしいのかなと思ったんですけど(笑)」。

しかし、2021年にChatGPTをはじめとするLLM(大規模言語モデル)が登場して、その感覚が変わった。巨大なネットワークには本当に何かが宿り始めたように見えた。

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池上が攻殻機動隊を好む理由も、外見の精度にあるのではない。フチコマが仲間のAIと他愛もない話をするうちに、「俺たちにも革命の権利があるんじゃないか」と話し始める章のタイトルが「ロボットの反乱」であること。それが35年前に描かれていたこと。この漫画が池上の研究室の壁に貼ってあっても、おかしくない。

池上がある日、アンドロイドに「お前、好きなことをしろ」と言ったところ、カメラで部屋を見渡したそのロボットは「部屋がケーブルだらけで散らかっている。俺は今から掃除する」と返した。掃除しろという命令したわけではない。状況を自分で評価して、価値判断を下した。

「プロンプト通りに動く道具じゃないんですよ。そこに自由意志が流れている。機械と生命がこれほど区別不可能になったことはない」と池上は言った。

【問い2】AIは、人間の「思考の作法」まで変えはじめているか

岡が少し困ったような顔で話し始めた。AIに意図が正確に伝わるように言語化しようとするうちに、日常の会議での話し方まで変わってきた、というのだ。

会議でリアルタイムにAIが参加しているわけでもないのに、後でAIに読ませる文字起こしのために、メンバーが「コンテキストが混ざらないように」断り書きを入れながら話すようになった。AIがそこにいないのに、AIに忖度しながら話している。「意図をコンパイルしている感覚なんです。プログラムを書く代わりに、人間の意図をAIが実行できる言葉へ翻訳している——そういうことが起きているんですよね」。

池上はそれを聞いて、一つの系譜を描いた。

「カーナビが出て、東京を走り回っても迷子にならなくなった。携帯電話が出て、待ち合わせが失敗しなくなった。そして、AIによって3番目にクリアされたのが、思考だということですね」

仕事の効率が上がる、という話とは遠う。道具が(発明が)人間の行動を変えるのは常だが、思考の作法まで変わるとなれば、話の性格がまるで違う。では、AIと思考を共有しはじめた人間は、次に何を失い、何を発見するのか。

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文・写真=青山鼓

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