米国の一流研究所に匹敵する、安価な中国製AIモデルが世界で広く使われる
この問題をめぐる重要な論点の1つは、中国から低コストのAIモデルが広く入手可能であり、米国の一流研究所のより高価な製品にほぼ匹敵する性能を発揮する点だ。言い換えれば、他所により安価な選択肢があるなら、米国製や自国の技術を使う合理性が薄れる可能性がある。
OpenRouterによる100兆トークンの実証研究によれば、中国のオープンウェイトLLMの世界シェアは2024年後半の1.2%という低い水準から、2025年には数カ月で30%近くまで上昇した。MITとHugging Face(ハギングフェイス)の研究者による別の研究では、2025年8月までの1年間における世界のAIモデルダウンロードのうち、中国のオープンウェイトモデルが17.1%を占め、米国の15.86%をわずかに上回った。中国が米国を上回ったのは初めてだという。
報道によれば、議会委員長らも2026年初頭に同様の指摘をしている。中国開発のオープンウェイトAIモデルが世界のAIワークロードに占める割合は、2024年後半のおよそ1%から、2025年末には推定30%へ増えたという。
積極的なオープンウェイト化戦略による、中国製AIモデル利用の急増
その勢いの多くは、積極的なオープンウェイト化という戦略に由来する。
アリババ・クラウドの主力であるQwenモデルファミリーは、開発者プラットフォームHugging Face(ハギングフェイス)で2026年1月までに7億回のダウンロードを突破し、世界で最も広く使われるオープンウェイトAIシステムになった。2025年1月にオープンウェイト化されたDeepSeekの推論モデルR1は、報じられるところでは、米国の最良のシステムに匹敵する性能をコストのごく一部で実現し、その過程で世界の開発者からの信頼も勝ち取った。
Airbnbは合計13のAIモデルを使用しているが、Qwenへの依存度は高い。チェスキーはQwenを「非常に良い」「速い」、そして手頃だと評している。顧客対応エージェントを導入して以降、平均解決時間は約3時間から6秒へ短縮されたと、同社は2025年に述べている。
Airbnbの中国製AIモデル利用を調べているのと同じ下院委員会は、人気のAIコーディングツール『Cursor』を手がけるAnysphereにも、同様の書簡を送っており、この点も注目に値する。調査側の焦点は、Cursorの「Composer 2」がMoonshot AIのKimiモデルファミリーに由来するかどうかにある。
さらに、OpenRouterとベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツによる報告書によれば、2026年のオープンウェイトLLM利用の急増は、アリババのQwenファミリー、DeepSeekのV3、Moonshot AIのKimi K2といった中国開発のシステムにより押し上げられているという。
グーグルのピチャイCEO、「米国が最前線にとどまるために十分なことをしているのか?」
クローズドモデルとオープンウェイトの双方のモデルを提供するAlphabetのCEO、スンダー・ピチャイは、最終的な問いは米国が先頭を維持するために十分なことをしているかどうかだと述べた。
ピチャイは、開発者会議「Google I/O 2026」での対談において、「企業は多くの要因を最適化している」とし、オープンウェイトモデルとクローズドモデルの双方に居場所はあると語った。
「適切なライセンスのもとでのオープンソースであるなら、どこで生まれたかは重要性が小さくなるはずだ。オープンソースにはコミュニティが伴い、それに責任を持ち、気にかける人々がいる。だから、そのソフトウェアで何か問題が起きていても、見過ごされることはない。それが、人々がその技術を採用するうえでの信頼の水準を生む」。
「私がより懸念するのは『中国のオープンソースモデルを採用しているのか?』ではなく、『米国が最前線にとどまるために十分なことをしているのか?』だ」。
これは、チェスキーを含む米テック企業の幹部が共有しているとみられる論調だ。そしてこの論調は、データの流れ先にかかわらずモデルの選択自体を脆弱性とみなす傾向にある議会共和党と、彼らの対立を一段と深めている。


