良いニュースもある。インドネシアの2026年1〜3月期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比5.61%に加速した。ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、サラ・タンは、成長の加速によってインドネシア経済は短期金利の上昇を吸収しやすくなると述べている。他方、悪いニュースは、タンが指摘するように「弱含むルピアを支えるための中銀の為替介入が相場の安定化につながっておらず、外貨準備高も減少している」ことだ。
実のところ、ルピアが下落しているのにはもっともな理由がある。慢性的な財政赤字と経常赤字、力強さを欠く輸出、国内政策をめぐる懸念、さらにこれらすべてを悪化させている燃料高などだ。投資家や格付け会社は、プラボウォ・スビアント政権による大規模な財政支出策や、中銀の金融政策決定に影響力を行使しようとする動きを懸念している。
指数算出大手の米MSCIは、インドネシアの株式市場の運営状況を見直しており、市場区分を「新興国」から「フロンティア」に格下げすべきか検討中だ。MSCIはインドネシアの市場の透明性に懸念を示している。5月には、株式保有が少数の投資家グループに集中しているとして、インドネシア有数の富豪らに関連する6社を指数から除外した。
プラボウォ大統領は2025年9月、国際的に高い評価を受けていたスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相を突如解任した。これはインドネシアにとって悪手だった。世界銀行の専務理事などを務めたスリはかねて、過度な財政拡張への回帰を防ぐ重要なストッパー役と見なされていた。世界経済が不安定化している現在、インドネシアは東南アジア最大の経済の舵取りをしていくうえで、まさに彼女のような手腕と謹厳さを備えた人物こそ必要だったはずだ。
要するに、インドネシア政府が危機の再来をめぐって責任転嫁をしたり、言い繕ったりすることはできても、為替相場は嘘をつかないということだ。ルピア相場は、この国が再び危うい状況にあることを物語っている。同じことはアジア地域全体についても言えるだろう。


