韓国政界筋の一人は「有権者は、保守が2024年12月の戒厳令を反省していないと感じている」と語る。国民の力の張東赫代表は今年1月、戒厳令について謝罪したものの、内乱首謀罪に問われた尹錫悦前大統領に2月、無期懲役の一審判決が出た際には「残念で惨憺たる思い」と語り、尹氏をかばう姿勢を示した。同筋は張代表について「TKラインのオールド保守の支持を得るために、尹氏を正面から批判できていない」と語る。戒厳令当時の党代表で、尹氏を激しく批判した韓東勲氏は今年1月、同党を除名され、現在は国会議員補欠選挙に無所属で立候補している。同筋は「保守が分裂したため、今回の選挙では歴史的な惨敗に終わる可能性がある」と語る。
こうしたなか、張氏は日韓首脳会談前日の18日、SNSへの投稿で「高市氏は日本の政界でも代表的な右派。過去の李在明の主張によれば、高市氏と向き合って座ること自体が『極端な親日』だ」と主張した。韓国保守は過去、日韓安全保障協力を進めてきたが、進歩勢力の反対に悩まされてきた。2012年6月には、当時の李明博政権が、進歩系勢力の猛烈な反発に遭い、日韓秘密軍事情報保護協定の署名を直前にキャンセルしたこともある。李在明政権が日韓ACSAに慎重なのも、こうした過去があるからだ。
だが、日韓安全保障協力を進めてきた保守勢力としては、安東での日韓会談の成果について、「もっと進めろ」と言うのが筋で、「極端な親日」と批判するのは自己矛盾に等しい。別の政界関係筋は「確かに、保守も進歩も親日を公然と語るのがはばかられる空気はまだ韓国に残っている。それでも、あんな発言をするのは、保守がそれだけ追い詰められている証拠でもある」と語る。
進歩を支える支持層の主力は50~60代で、「あと20年は、進歩優勢の構図は変わらない」という声が、韓国政界から漏れ聞こえる。朝鮮半島や台湾がその間、平穏を保てればいいが、そうならない可能性もある。日韓関係筋の一人は「保守であれ、進歩であれ、環境が激変すれば生き残ろうとする本能が働く。そのときは、韓国も日韓協力を拒もうとはしないだろう。それまで日韓のパイプを強化して維持しておくことが大切だ」と語った。


