サイエンス

2026.06.04 18:00

ヒトはなぜ冬眠しないのか? 43万年前の骨が明かす進化の分岐点

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冬眠・休眠することがわかった「原始的な哺乳類」

タスマニアなどに生息するハリモグラが冬眠することが判明したとき、研究者たちは、冬眠に関する時間軸を根本から再考する必要に迫られた。ハリモグラは単孔類(卵を産む原始的な哺乳類のグループ)で、1億2000万年以上前に他の哺乳類から分岐した生物だ。

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哺乳類の中で最も早い時期に分岐した系統が冬眠するのであれば、あらゆる哺乳類に共通する祖先が、そもそも冬眠していた可能性が浮き上がってくる。

現在、有胎盤類から有袋類、単孔類まで、哺乳類のうち少なくとも7つの目(もく)で、冬眠の習性が判明している。2025年に『Science』に掲載されたゲノム研究では、冬眠する哺乳類と冬眠しない哺乳類の比較分析を行い、視床下部において(進化的に)保存された調節領域を特定した。そこで見いだされた共通する遺伝子的特徴は、冬眠を支える分子メカニズムが、種を超えて似通っていることを示している。

さらに、系統樹の現生人類に近いところで、驚くべき事実が判明した。マダガスカルに住むキツネザルが冬眠することがわかったのだ。具体的には、コビトキツネザル科に属する数種が、雨が降らない冬の時期(気温が摂氏約15~20度を下回る乾季)に、季節的な休眠(seasonal torpor)に入る。これが大きな意味を持つのは、キツネザルが霊長類、すなわち我々人類のより近縁にあたる動物だからだ。

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『Genomics, Proteomics & Bioinformatics』に掲載された研究論文では、霊長類における代謝率低下を研究する主要モデルとして、マダガスカルに住むコビトキツネザル科に属するハイイロネズミキツネザルを取り上げている。この種のキツネザルには、休眠に入り、エネルギーを多く消費する細胞プロセスを抑制するという、霊長類では他に類を見ない能力がある。

こうした研究により、休眠を実現する遺伝的な基盤が、我々人類も属する霊長類の系譜のどこかに存在していることが判明した。しかし、現生人類ではその機能は発現していない。

ここでの問いは、なぜ動物は休眠・冬眠するのか?という点にはなく、むしろ我々人類が、なぜそれをやめたのか?ということになる。その答えは3つの層から構成されており、エレガントとさえ言えるほど、巧みに絡み合っている。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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