2008年の出生減で新入生が13%減り始める
タルサ大学のような苦境は、決して例外ではない。フォーブスは毎年、全米900校超の私立非営利大学を対象に財務健全性を分析・評価している。だが、多くの大学が同じような圧力にさらされている。2026年は、以前から予測されていた高校卒業者数の長期的な減少がいよいよ始まる年にあたる。2008年の大不況期に出生率が落ち込んだ影響で、大学が新入生として取り込める層は13%減少する見通しだ。
この「人口動態上の崖」が迫るなか、教育省のデータは、別の変化も示している。物価上昇の負担に直面する中所得世帯の学生は、授業料だけで最大7万5000ドル(約1200万円)に達する高額な私立大学を避けている。より安価な公立大学を選ぶか、大学進学そのものを見送る動きも出ている。
トランプ大統領の「ひとつの大きく美しい法案(One Big Beautiful Bill Act)」は、親向けの連邦教育ローン「Parent PLUSローン」に新たな上限を設けた。学生1人あたりの年間借入額は2万ドル(約318万円)に制限された。留学生の在籍数も20%近く減っている。こうした要因が重なり、大学運営者は極めて困難な局面に置かれている。しかも、その多くは財務管理の経験が乏しく、ましてや再建戦略に詳しいわけではない。
928校の25%超がD評価、難関校の11%はA+
フォーブスは今回、在学生500人以上の私立大学928校を分析し、そのうち25%超を最低評価のDとした。これは、フォーブスが2013年に財務健全性の評価を始めて以来、最悪の結果だ。分析対象校のほぼ半数は、C以下の評価にとどまった。
一方で、入試の難度が高く、優秀な学生を集めるエリート校は引き続き強さを見せている。アイビーリーグ各校や、フォーブスが選ぶ「ニューアイビー」に名を連ねる大学がその代表だ。カリフォルニア州のポモナ・カレッジから、ハーバード大学、MIT、ミネソタ州のセント・オラフ・カレッジまで、100校超、全体の11%にあたる大学が、財務評価で最高のA+を獲得した。
タルサ大学の元教授が大学財務を分析する会社を起業
ヘンドリックスによるタルサ大学の財務分析は、同校の実態を明らかにしただけでなく、その後の展開を見通す上でも非常に有効だった。そのため、ヘンドリックスはまもなく、自ら開発した財務ダッシュボードを、希望する大学に提供するようになった。
「タルサ大学よりもはるかに悪い状況にある大学があることを知り、正直ショックを受けた」と、44歳のヘンドリックスは語る。彼は当初、Bマイナス評価を受けたシカゴのセント・ザビエル大学や、カリフォルニア州オークランドのミルズ・カレッジなどの教員や卒業生に、自らのソフトウェアを無料で提供していた。なお、ミルズ・カレッジは2022年、ボストンのノースイースタン大学に統合された。
ヘンドリックスのソフトウェアへの需要は、とりわけ高等教育分野を扱う大手コンサルティング会社の間で高まっていった。これを受けて、ヘンドリックスは2022年末にタルサ大学の教授職を辞め、自宅ガレージを拠点に自己資金で、私立大学の財務状況を分析するスタートアップ「パースペクティブ・データ・サイエンス」を立ち上げた。その時点で、ヘンドリックスはアリババのオープンソースAIプラットフォーム「Qwen」を活用し、大学ごとの監査済み財務諸表やその他のデータを学習させていた。現在では、同社のシステムがそうしたデータをリアルタイムで収集できるようになっている。
流動性を測る指標UNAEPで192校がマイナス
パースペクティブ・データ・サイエンスが特に重視している主要指標の1つが、UNAEPと呼ばれるものだ。これは、正式には「Unrestricted Net Assets Exclusive of Plant」と呼ばれる。特に授業料収入への依存度が高い中堅大学の実態を見る上で、重要な指標だ。この指標は、大学の流動性を測るものだ。学生寮や校舎といったすぐに現金化できない資産を、それに対応する負債とともに除外することで、大学が毎年の支出に充てられる資金を実際にどれだけ持っているかを示す。
この指標で見る資産は、寄付者からの資金とは大きく性格が異なる。寄付金は通常、特定の学術プログラムなど使途が指定されているため、大学の通常運営には使えないからだ。フォーブスがヘンドリックスの3年分のデータを使って分析したところ、現在、192の私立大学がUNAEPでマイナスの状態にあることが判明した。その多くは実質的に支払い能力を失った状態にあり、給与を支払い、最低限の運営を続けるために、借入に頼ったり、使途が制限された寄付金に手をつけたりしている。


