人員30〜40人、1作品を約15億9000万円未満で制作
こうした新たな映画制作ツールを最初に使いこなした企業は、巨額の利益を得る可能性がある。シェンによると、『Cortés』のようなプロジェクトに必要な人員は30〜40人程度で、内訳はクリエイティブ担当が10人、残りは技術サポート担当だという。AIを使わずに同様の作品を制作する場合、数百人、場合によっては数千人が必要になる。
シェンは制作費を明らかにしていないが、フォーブスは1作品あたり1000万ドル(約15億9000万円)未満になる可能性があると推計している。これは、2026年公開の『オデュッセイア』や『デューン 砂の惑星PART3』のような大作にかかる2億5000万ドル超(約397億5000万円)の制作費と比べれば、わずかな金額だ。
こうした高いコスト効率は、大きな利益を生む可能性につながっている。ウェーバーが率いるEx MachinaとUtopaiは、ブラジルのGlobo TVやドイツのZDF Studiosといった放送局に対し、一部の国際配給権をすでに事前販売している。しかも、その価格はAIを使わない作品と同等の市場価格に基づいている。
フォーブスは、『Space Nation』と『Cortés』が完成作品として納品されれば、合わせて最大1億1000万ドル(約174億9000万円)を生む可能性があると推計している。他の地域やグローバル配信サービスに販売できれば、収益は一段と上振れする可能性がある。Utopaiにとって、これらの作品は、PAIツールキットのライセンス取得を検討する各国の制作会社に向けたマーケティング手段にもなる。
AI生成への抵抗感が米国より小さく、需要が大きい海外市場
これは優れたシナジー効果にもつながる。なぜならシェンによると、AI生成コンテンツに対する海外の抵抗感は、米国よりもはるかに小さいからだ。インドネシア、マレーシア、コロンビアのような国々は、より多くの地域色の強い映画やテレビ番組を求めているものの、これまでAIの支援なしにローカル作品を大規模に制作するだけの予算を持っていなかった。
Utopaiは4月、中国有数の映画・テレビ制作会社であるHuaceとも契約を結んだ。中国では、AI生成のマイクロドラマがすでに160億ドル(約2.54兆円)規模の産業となっており、AIキャラクターは劇場公開作品にも登場している。
米国で受け入れられるかわからない中、業界の不安を和らげる
ただし、こうしたコンテンツが米国で視聴者を獲得できるのか、広く受け入れられるのかはまだわからない。シェンは業界に対し、Utopaiが著作権に抵触しない訓練データセットを使っていること、職能団体と協力する意思があること、創作上の意思決定を人間の側に残す必要があることを強調している。こうして、業界側の不安を和らげようとしている。
「多くの人は、この技術そのものを恐れているわけではない。少しためらいを感じている人も、我々の取り組み方を見れば、かなり安心してくれると思う」とシェンは語る。


