元グーグルのエンジニアが、2022年にビデオゲーム向け3D技術で創業
Utopai共同創業者のシェンは、閉鎖的なハリウッドで力を持ってきた従来型の映画業界人とは、まったく異なる存在だ。中国で生まれ、トロントで育った彼女は、コロナ禍の中でウォータールー大学を中退した。カナダロイヤル銀行でAI関連の仕事に就き、グーグルのムーンショット研究開発部門「X」に移った。そこでシェンは、研究責任者でソフトウェアエンジニアだった共同創業者ジエ・ヤンと出会った。
2人は2022年、当時Cybever AIと呼ばれていた会社を創業した。当初はビデオゲーム開発で使う3D環境を生成するAIツールを開発していたが、やがてその技術が映画やテレビにも応用できる可能性に気づいた。
2022年以降に65社超が設立、ハリウッドで進むAIスタジオの競争
このような構想を抱いたのは、決してシェンとヤンだけではなかった。ある業界リポートによれば、65社を超えるAIスタジオが2022年以降に新たに設立されたという。その多くは、AIを使って作品の制作工程を効率化する事業と、作品そのものを完全にAIで生み出す事業のあいだにある、曖昧な領域で活動している。
AIへの期待は、自分たちの仕事が近く不要になるのではないかという根源的な不安を、ハリウッドの労働組合や職能団体に所属する人々の間に引き起こしている。投資家や経営幹部の間では、将来の勝者になり得る企業を見極めようとする熱狂も生まれている。彼らの多くはここ数年、有力企業になりそうなAI企業に資金を投じている。
ネットフリックスやライオンズゲート、AI企業との提携や買収に乗り出す
ディズニーは2025年12月、OpenAIと10億ドル(約1590億円)の契約を結んだ(OpenAIが4月に動画生成AI「Sora」のプラットフォームを閉鎖したため、この契約は打ち切られた)。ネットフリックスは、ベン・アフレックのAI映画制作ツールInterPositiveを最大6億ドル(約9540億円)で買収した。
Foxエンターテインメントは、AIを活用したマイクロドラマ制作スタジオHolywaterに出資した。ライオンズゲートは、Runway AIと提携した。Foxの元会長ピーター・チャーニンとCAA共同創業者のマイケル・オービッツは、Promise AIに出資している。パラマウントに出資するレッドバード・キャピタルは、B5 Studiosに資金を投じている。同社の経営陣には、ディズニーの元映画部門トップであるショーン・ベイリーと、著名プロデューサーのジェフ・シルバーが名を連ねる。
Utopaiにも、従来のハリウッド側の支援者がいる。同社は、Pluto TVやParamount+の元社長トム・ライアンから初期出資を受けている。
「投資家の間では、『この業界の未来はどうなるのか』というテーマをめぐって大きな期待が高まっていると思う」と、競合企業Asteria Film Co.の創業者ブリン・ムーザーは語る。同社の親会社は昨夏、8400万ドル(約133億5600万円)の資金調達ラウンドを完了した。「本当に問われるのは、長期的に見て、この分野で最後まで生き残っているのは誰なのかということだ」。


