経営・戦略

2026.05.26 13:15

資産の定義変える「企業価値担保権」の行方 第二回:スタートアップ支援の第一人者・大櫃「経営チームを新時代の担保に」

5月25日に始まった「企業価値担保権」。知的財産やノウハウ、人的資本など無形資産を担保に融資する新たな制度に、スタートアップ融資の突破口を見出している人物がいる。

みずほフィナンシャルグループでスタートアップ融資を牽引し、現在は投資ファンドのミダスキャピタル専務取締役パートナーの大櫃直人だ。メルカリやマネーフォワードなど、日本を代表するメガベンチャーの成長性を創業初期に見抜き、スタートアップ融資の第一人者とも評されている。年間1000社のスタートアップと面談を行い、現在も投資ファンドで成長支援に携わる。ブレイクスルー企業を第一線で発掘し続ける大櫃に、企業価値担保権が求められる背景から展望、制度浸透の課題、スタートアップ融資の目利きポイントまで語ってもらった。


判断軸は「経営チームの質」と「事業・業界理解」の2つだけ

── まず、企業の事業モデルの抜本的な変化と、不動産担保に依存した融資の課題について教えてください。

大櫃直人(以下、大櫃):かつての企業価値は、工場や不動産、設備といった「目に見えるもの」で構成されていました。これまで銀行は可視化された担保を取ればよかった。ところが今は、ソフトウェア、データ、ブランド、人材、ノウハウといった無形資産が価値創造の中心になっています。これらは目に見えないし、動的でもある。バランスシートに落とし込んだ時に見えなくなってしまうので、担保として取ることが非常に難しい。そういう意味で、担保依存モデルはもう限界を迎えていると思っています。

その中でもスタートアップは不動産も持っていないし、信用も実績もない。それでも銀行としては融資しなければならないのですが、私の着眼点は、結局2つで、「経営チームの質」と「事業・業界理解」です。担保という形では取れないけれど、そこに価値を見出して目利きで判断していました。

──「経営チームの質」を重視される理由と具体的な評価のポイントは。

大櫃:今までの日本企業は、踊り場を作りながら段階的に成長できました。設備を磨いて、人材を採用して、信用を積み上げていく。でも今のスタートアップは、大量の外部資金を集めて短期間で勝負を打つ。踊り場を作っている暇がないんです。だから経営者1人が順番に何かを蓄えていくやり方では戦えません。最初から強い経営チームを複数名で揃えていないと、急成長期を乗り切れない。

加えて、ワンマン経営者が一人だと切羽詰まった時に視野が狭くなって、間違った判断をしやすくなります。3人程度の強いチームがあれば、互いに補完し合いながら冷静な判断ができます。だから優秀なチームの有無は、スタートアップ目利きの原点だと思っています。

私が経営陣との会話の中で必ず確認するのは、「人・モノ・カネをバランスよく語れているか」ということです。「御社の強みと弱みは何ですか」と聞いた時に、自分たちのリスクをちゃんと冷静に分析できているか。そしてそれが人・モノ・カネの3つの観点からバランスよく出てくるか。

失敗しやすいパターンは決まっていて、特にディープテック系はモノ、つまり技術や製品の話に偏りがちです。逆に生き残っている経営者は、この3つをバランスよく語っている。それが肌感覚として見えてくるんです。

3人の経営チームでも、それぞれが人・モノ・カネを担当していて、チームとしてトータルバランスが取れていれば問題ないです。成長期のユーグレナがまさにそうでした。3人合わせるとバランスが取れていた。チームとして機能しているかどうかが重要です。

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