キャリア・教育

2026.05.29 13:30

AI時代に生き残る能力はネガティブ・ケイパビリティ。SMBCのAI推進トップと哲学者が語る6つのキーワード

磯和啓雄(写真左)谷川嘉浩(同右)

谷川:いきなり大がかりにやらずに、大きなことに取り組むためのケイパビリティを組織のあちこちに構築することから進めたんですね。それだと社内の文化との衝突も少なそうです。一足飛びにやらずに、いつか逸脱して大きく仕掛けるつもりで準備するのには賛成です。そうでもしないと、上の役職のアプルーバル(承認)を取ること自体を目的化してしまうことも多いんじゃないですか。

advertisement

磯和:目的と手段が入れ替わることは問題です。組織論でいうと、ビューロクラシー(官僚制)の病理をきちんと考えないといけないですね。特にゼロからイチを生み出す新規事業には官僚制がマイナスにしか働きません。AIの使い方は部長より若い社員のほうが知っているし、尖ったアイデアもその価値を理解できない管理職が間に入るとつまらなくなっていく。社員のアイデアに予算付けをするCDIOミーティング(26年4月から「デジタル・イノベーション戦略会議」に名称変更)では、なるべく「やったらええやん」と背中を押しているんです。象徴的にやることで、社外からデジタル化推進の先行事例と評価してもらったり、優秀な人材が集まる効果が生まれています。

すべての勝負は「業務の端っこ」にあり

谷川:そこで気になるのは、華やかに見える新規事業部門と、地道に稼ぐ既存事業部門の軋轢です。前者に対し、後者が「自分たちが稼いだ金で」と冷ややかになることがありますね。どう折り合いをつけているんですか。

磯和:僕らは、金融領域と非金融領域のデジタル新規事業という2つのミッションがあります。そこで部下には、中途のデジタル人材に「銀行業務」を、新卒行員には「デジタル」を、それぞれに両方を勉強してほしいと伝えています。両方の知識習得があって初めてイノベーションができるんです。

advertisement

また、個人向け総合金融サービス「Olive」や「Trunk」はつくった後に既存部門に渡し、その部門の収益の柱になっています。現業とあまりにも離れたところを攻めようとすると失敗する可能性が高い。両方やらないといけませんが、金融領域はあくまで既存のアップデートなので。

谷川:特殊技能をもった尖った人材を寄せ集めるのではなく、一人ひとりが両方の知識を兼ね備えるべきだということですね。学問の世界でも同じで、「学際性」が大事だとよく言うんですけど、ただ異分野の学者が集まってもみんなで独り言を言うだけ。専門をはみ出て、専門外を互いに勉強しないと会話にならないんです。

磯和:僕はそれを、自分の業務範囲の際として「業際(ぎょうぎわ)」って呼んでいます。すべての勝負は、自分の業務の端っこ、少しはみ出していくような際にあるんです。

次ページ > AIが溶かす「自他の境界」

文=倉田憲多 写真=若原瑞昌

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事