Forbes JAPAN 2026年7月号は「世界のビリオネアランキング」特集。史上初の「1兆ドル長者」に迫るイーロン・マスクをはじめとした億万長者たちの2026年版最新リストを公開する。表紙を飾るU-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO・宇野康秀を成功に導いた「アイデアノート」や、孫正義、柳井正ら日本のビリオネアが実践するノート活用術を紹介。さらにウォーレン・バフェットら偉大な投資家たちの習慣など、富を築く者たちの哲学とルーティンを紐解く。
年収が6万~9万ドル以上になると幸福度は上昇しない──。行動経済学の創始者で、ノーベル経済学賞の受賞者でもあるダニエル・カーネマンは2010年、「幸福のプラトー(頭打ち)」と呼ばれる概念を提唱した。これに異を唱えたのが、ペンシルベニア大学ウォートン校で上級研究員を務めるマシュー・キリングスワースだ。ふたりは23年、「敵対的共同研究」というかたちで一編の論文を発表する。その結論は、比較的幸福度が低いグループでは、年収10万ドルを境に幸福度の上昇が頭打ちとなるが、幸福度が高いグループでは、「プラトー」は存在せず、年収の増加とともに幸福度も上がり続けるというものだった。やはり、お金はあればあるほど幸せなのか? 気鋭の心理学者がビリオネアの幸福度の秘密を解き明かす。
──イーロン・マスクが史上初の「トリリオネア(1兆ドル富豪)」に迫り、富のスケールが未知の領域に突入しています。「年収の増加とともに幸福度は上がり続ける」という23年の結論は、最新の研究でも変わっていませんか。
マシュー・キリングスワース(以下、キリングスワース):それ以来、さらなる進展があった。例えば、24年に発表した論文では、以前の研究の上限であった年収50万ドルをはるかに超えても、幸福度が上昇し続けることを示している。したがって、お金が増えることと幸福度が高まることの関係は、かなり幅広い経済的範囲にわたって続いている可能性が高い。
──それは、ビリオネア(億万長者)はミリオネア(百万長者)よりも幸せで、さらに言えば、トリリオネアはビリオネアよりも幸せかもしれないということでしょうか。
キリングスワース:ある一定の金額を超えると幸福度が頭打ちになるのかどうか、確かなことはわかっていない。もしそのような「プラトー」が存在するとしても、それは富や年収の曲線のかなり上のほうになると考えるべきだ。しかし、5000万ドルを超えたあたりで停滞するのか、50億ドルなのか、あるいは完全に停滞することはないのかは、まだわかっていない。私は現在、これをさらに調べるために研究を続けている。
一方で、覚えておくべき重要な事実がある。それはごく少数の超富裕層について話す際に特に重要で、「幸福はお金以外の多くの要因によって決まる」ということだ。その結果、非常に貧しくても幸せな人もいれば、非常に裕福でも惨めな人もいる。ただ、平均してみれば、裕福な人のほうが少し幸せな傾向があるというだけなのだ。
地球上で最も裕福な人々について話すならば、彼らの幸福は主にお金以外の要因によって決定される。もし彼らが幸せな性格、強固な人間関係、良い個人的習慣をもち、その他のウェルビーイングを支える多くの要因を備えていれば、その富豪は極めて幸せかもしれない。しかし、金銭以外の要因が彼らのウェルビーイングを大きく損なっていれば、たとえいくら裕福であっても簡単に不幸になりうる。単一の要因だけで幸福が保証されることはないのだ。



