欧州

2026.05.25 07:30

ウクライナの戦後復興について考える 農業と鉱業の回復を促すには

ウクライナ中部ミロニウカ近郊の小麦畑。2022年7月29日撮影(Alexey Furman/Getty Images)

しかし、こうした状況下でも、長期的な論理は揺るぎない。これが、米国がウクライナと鉱物資源に関する協定を結んだ理由だ。ウクライナは欧州最大級の鉱物資源埋蔵量と豊かな産業遺産を保持している。一方、欧州は再軍備と電化を進め、ロシアや中国への依存を低減しようとしている。こうした状況が、地質、地理、そしてタイミングの3者が一致する好機を生み出しているのだ。

advertisement

問題は、鉱山や製錬所が戦略的な論理だけで運営できるわけではないという点だ。それらは電力、輸送、そして信頼によって支えられている。ウクライナでは現在、侵攻前の発電能力の約3分の1しか稼働していない。同国の道路、変電所、鉄道、港湾はすべて損傷を受けている。投資家が参考にする地質データの多くは30~60年前のもので、ソビエト時代の調査にさかのぼる。資金調達は逼迫(ひっぱく)しており、ウクライナ企業は2026年に約30億ドル(約4800億円)の債務返済に迫られる一方、25~28年にかけての広範な資金需要は1500億ドル(約23兆8200億円)を超えるとみられている。

つまり、金属産業の復興は単に高炉を再建するだけの話ではない。高炉を中心としたシステムを構築することが必要なのだ。世界銀行は最近、ウクライナの鉱業部門の復興には、設備、近代化、社会基盤への数十億ドル規模の投資が必要になり、加工、電力、輸送の需要と合わせると、その額は数百億ドルに達する可能性があると指摘した。こうした制約が解消されれば、冶金産業は数年以内に侵攻前の水準に回復し、ソビエト時代より効率的になる可能性は十分にある。輸出市場が完全に回復するまでの間、橋梁や住宅、産業施設、輸送網など、国内の復興事業だけでも強力な需要が生まれるだろう。

さらに、より広範な資源に関する動きもある。米国とウクライナの間で締結された戦略鉱物協定は、米国の投資、技術移転、長期的な供給を通じて、ウクライナの重要鉱物産業を発展させることを目的としている。その範囲は採掘だけにとどまらず、探査や加工、そして中国が支配する供給網への西側の依存度を低減させるための二国間経済関係の強化にまで及んでいる。他方で、ロシアの侵攻が続けば民間投資は抑制されたままとなるだろう。鉱業プロジェクトには安定した操業環境と、資産が紛争によって脅かされないという確信が求められるからだ。

advertisement

したがって、短期的に最も現実的な投資機会は、必ずしも巨大な新規開発プロジェクトではない。より迅速でリスクの低い機会、すなわち、既存鉱山の再生、尾鉱処理、モジュール式発電システム、物流ターミナル、スクラップ回収、下流工程処理などだ。特に興味深い事例として、回収可能な特殊金属を含むとされる推定30万~40万トンのウラン尾鉱が挙げられる。これらはロマンチックな開拓事業ではない。実用的な出発点だ。

ウクライナでは依然として組織的な汚職が投資の障壁となっており、数百億ドル規模の復興資金が流入する前に、この問題に対処しなければならない。「ミンジチ・ゲート」は過去最大のスキャンダルだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の側近であるチムル・ミンジチは、国営エネルギー企業エネルゴアトムから約1億ドル(約160億円)の賄賂を不正に受け取り、その資金の一部を首都キーウ近郊の高級別荘を通じてマネーロンダリング(資金洗浄)したとされる。この計画には、ルステム・ウメロウ前国防相やユリヤ・スビリデンコ首相らも巻き込まれた。大統領府のアンドリー・エルマク前長官は、同じ別荘プロジェクトに関連する資金洗浄の容疑で起訴された。流出した議事録には、ゼレンスキー大統領の愛称である「ボバ」への言及があるものの、同大統領は捜査対象となっていない。

次ページ > 実践的な復興計画

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事