ウクライナ侵攻終結後の経済復興の物語は、新興企業やフィンテックによってつづられることはないだろう。それは、農地や製鉄所、鉱山、パイプライン、港湾、無人機(ドローン)の製造の現場で描かれることになる。
なぜなら、かつて同国の輸出を支えていた農業、冶金(やきん)、鉱業といった産業こそが、戦時下の生存から持続的な成長へと至る最も明確な道筋を示しているからだ。ロシアが軍事侵攻を開始する以前、これらの産業はウクライナの国内総生産(GDP)の約20%、商品輸出のほぼ半分を占めていた。現在、これらの産業は深刻な打撃を受け、資金不足に陥り、操業上の制約を受けている。
だが、これらの産業には依然として大きな構造的優位性がある。ウクライナには世界有数の肥沃(ひよく)な農地のほか、鉄、マンガン、チタン、黒鉛、ウランが眠る膨大な鉱床、そして欧州市場に近いという地の利がある。そして何より重要なのは、国内に巨大な復興市場が生まれるという点だ。
投資家や政策立案者にとっての核心的な問いは、ウクライナに資産があるかどうかではない。あることは確かだ。真の問いは、この資産を生産的な資本へと転換させるために、安全保障、社会基盤、統治、金融をいかに迅速に連携させられるかどうかだ。
穀物を生み出す肥沃な大地
農業はウクライナの回復力と失われた潜在力の双方を最も明確に示している。ウクライナの農家は戦火の中、輸出経路の変更や作付け体系の見直しを行い、極めて困難な状況下でも生産を維持するなど、並外れた適応力を見せてきた。それでもなお、農業生産量は侵攻前の水準を20.6%下回っている。その理由は痛ましいものだ。地雷が埋まった農地、破壊されたサイロやかんがい設備、避難や徴兵に伴う人手不足、危険性の高い輸出経路などが挙げられる。国連食糧農業機関(FAO)の緊急支援はウクライナの農業の安定化に寄与しているが、その予算は数千万ドル規模に過ぎない。真の復興費用は数百億ドルに上る。
復興に関するさまざまな評価を通じて、おおむね共通認識が形成されつつある。農業を元の水準まで回復させるには約550億ドル(約8兆7300億円)が必要になる。被害を受けた農地の除染と復旧だけでも約234億ドル(約3兆7200億円)と見積もられているが、この数字は既に古いと見なされている。物流やかんがい、機械の交換、運転資金などを考慮に入れると、費用は急激に膨らむ。さらに、長らく先送りされてきた近代化の推進や処理能力、貯蔵施設、精密農業、欧州連合(EU)標準システムへの適合などを加えると、総資本需要は900億~1000億ドル(約14兆2900億~15兆8800億円)に達する可能性が高い。
それは途方もない話に聞こえるかもしれないが、その見返りも大きなものになり得る。ロシアによる侵攻開始以前、農業はウクライナのGDPに大きく貢献し、世界の食料供給網の柱となっていた。土地が整備され、物流網が再建され、技術が近代化されれば、ウクライナは5~7年以内に市場占有率を回復し、侵攻開始前の農業生産量を上回る可能性さえある。言い換えれば、これは単なる復興の話ではない。生産性の飛躍につながる可能性を秘めているのだ。
鉱業とウクライナの未来
金属・鉱業部門は短期的には厳しい状況にあるが、中期的には恐らく戦略的な重要性を帯びるだろう。冶金業は2021年時点でウクライナのGDPの12%強を占めていた。その後、アゾフスタリ製鉄所やイリイチ製鉄所を含む南部マリウポリの産業基盤が破壊され、ウクライナの製鋼能力の40%近くが失われた。鉄鋼生産量は3分の2に減少した。



