この対立は実のところ、一発も撃たれていない時点でも米国に兆ドル単位のコストを強いている。米ブラウン大学の「戦争のコスト」プロジェクトによる最近の研究では、米政府は2012年から2024年の間に、中国との軍事競争に約3兆4000億ドル(現在の為替レートで約540兆円)、年平均およそ2600億ドル(約41兆円)を費やしたと推計されている。これは、同じ期間の米国の国防費全体の約3割にあたり、連邦政府の教育費の2倍近く、国務省向け予算の約3.5倍にのぼる。
米企業の損得勘定
トランプが5月13〜15日に行った訪中には、米国で最も大きな影響力を持つ企業トップ十数人も同行した。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)、エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、テスラやスペースXのイーロン・マスクCEO、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOらが含まれる。ちなみに彼らの純資産額は合計でおよそ1兆ドル(約159兆円)に達する。
これら米国の巨大企業にとって、今回の米中首脳会談は大成功というわけではなかったようだ。トランプは「素晴らしい貿易ディール」を結んだなどと吹聴し、エヌビディアの株価は、同社の高性能な半導体「H200」について米政府が中国企業10社への販売を許可したとの報道を受けて最高値を更新した。しかし、中国側は自国企業によるその購入を認めるのかどうか明らかにしていない。
関税問題にしても台湾問題にしても、画期的な進展はなかった。他方、習が口にした「衝突」という警告はなお重く漂っている。
大惨事への保険
ゲーム理論では、衝突のコストが十分に高ければ、合理的な主体は協調の道を探る公算が大きくなる。AI革命での台湾の重要性が増していること、そして台湾と米国の経済的結びつきが深まっていることは、世界にとって大惨事に対する最良の保険なのかもしれない。
とはいえ、ゲーム理論家なら誰でも忠告するように、「合理性」はあくまで理論上の仮定であり、現実に保証されるものではない。投資家は引き続き台湾海峡の動向を注視していくべきだろう。


