働く母親にとって、母親であることは研究者たちが「マザーフッドペナルティ(母親ペナルティ)」と呼ぶ不利益を伴うことが多い。男性は父親となった後に給与が上がる傾向にあるのに対し、女性は出産後に収入やキャリアで不利益を被りやすい。
過去1年以内に発表された複数の研究では母親たちが担う精神的負担や母親ペナルティ、在宅勤務オプションの意外なメリット、さらには職場における「母親であることの優位性」の可能性について新たな知見が示されている。
母親になるタイミングが母親ペナルティを左右
母親になるという決断は非常に個人的なものであり、キャリアや収入以外にも多くの要素の影響を受ける。だが研究では依然として母親になることが経済的に不利に働くことが示されている。専門誌『Journal of Applied Psychology』に掲載された研究は、母親になるタイミングがその後の収入への影響において重要な要素である可能性があることを示唆している。
研究者たちは約6000人の女性を思春期から中年期にかけて追跡した全国調査データを分析した。その結果、30代以降まで出産を遅らせた女性は早い時期に母親になった女性に比べて生涯所得が49万5000〜55万6000ドル(約7800万〜8800万円)多かった。年齢や人種、婚姻状況、学歴、労働時間を調整した後でも早期の出産は長期的な低収入と関連していた。
数十年にわたる研究で出産のタイミングは重要な要因であることが浮かび上がっている。これまでの研究では、出産をわずかに遅らせるだけでも経済的に大きな影響があり、ある推計では出産を1年遅らせることで生涯所得が約9%増加する可能性があるとされている。
「母親になることは、特に早い段階でそうなった場合、女性のキャリアの軌道を根本的に変えてしまう」と、研究の著者の1人である米ライス大学心理学教授エデン・キングは研究に関するプレスリリースで説明している。キャリア初期はスキルを磨き、経験を積み、賃金が急上昇する恩恵を受ける時期だ。この時期にキャリアが中断されるとそうした機会が制限される。そして賃金は時間とともに積み上がっていくため、キャリア初期のわずかな中断であっても長期的な影響を及ぼし得る。
「女性が中絶を受けられる環境でも、女性の経済面への成果には影響がない」と議員らが主張したことをきっかけに、研究者たちはこの研究に取り組むようになった。そして研究結果は政策面でいくつか示唆している。「避妊や安全な中絶へのアクセス、有給の育児休暇、州による保育支援を保障する政策は、女性の長期的な経済の安定にとって重要である可能性がある」と著者たちは記している。



