ただし、それが趣味のための買い物や、誰かへの贈り物を選ぶ時間でなければ話は別だ。互換性やサイズを細かく確認し、価格を比較し、決済手段ごとの特典まで見比べる作業に、できるだけ時間を割きたくない場面も多い。Universal Cartの魅力は、まさにそうしたショッピングにまつわる煩雑な手間を引き受け、購入までのプロセスを軽やかにしてくれる点にある。
共通のAIショッピング体験を普及させるための標準規格
Google I/Oの期間に合わせて、グーグルの本社で開催されたショッピング部門の責任者によるパネルディスカッションの場でも、この点は強調されていた。
従来のオンラインショッピングは検索した後に、アイテムの内容を調べてから、意中の品物を見つけるまで検索をひたすら繰り返すという反復作業だった。これに対して、会話型のAIショッピングではユーザーはより自然な形で「自分が何をしたいのか」を伝えられる。
例えば部屋に合う椅子を探す場合、これまでは「アームチェア」と検索し、無数の商品を一つひとつ見比べる必要があった。これからはAIに部屋の写真や好みのスタイルを伝えるだけで、色やデザインの相性を踏まえた候補が提案される。それだけでなく、実際に部屋へ置いたときのイメージまで、購入前に確認できるようになる。
こうしたショッピング体験を実現するために、グーグルが用意する新しい基盤がUniversal Commerce Protocol(UCP)だ。端的に言えば、UCPはAIエージェントと小売事業者、決済事業者などが安全かつ円滑に連携するための標準規格である。
例えばGeminiアプリから特定のオンラインストアの商品を購入する場合を考えてみる。AIがUniversal Cartを作成し、商品を追加、配送情報や支払い情報を受け渡し、最終的に購入を完了するためには、店舗側のバックエンドシステムとの連携が不可欠になる。
しかし、この仕組みを店舗ごと、あるいはエージェントごとに個別実装していては、対応できるのは一部の巨大な事業者に限られてしまう。UCPはこうした連携を共通化し、エージェント、小売事業者、決済事業者が同じ仕組みの上でつながるための標準規格となる。
この設計は中小規模の事業者にとっても重要な意味を持つ。グーグルはUCPのような共通プロトコルがなければ、エージェントが大規模な事業者としか連携できなくなる可能性があると説明している。裏を返せば、小規模な事業者でもUCPに対応することで、Geminiのようなエージェントから商品やサービスが利用される機会を得られるということだ。
もちろん実装に伴うエンジニアリングコストは残る。それでもグーグルはプロトコルをできる限りシンプルに、かつスケーラブルに保ちながら導入のハードルを下げることに注力しているという。


