一見すると、この行動は効率的に思える。AIにすばやい答えを求めれば時間を節約でき、業務の中断も減らせる。しかし問題は、職場で重要なスキルの多くが、議論、意見の相違、協働、そして他者への問いかけを通じて培われる点にある。そうした会話がなくなれば、従業員は答え自体は得られても、判断力を養う機会を失ってしまう。
レポートは、同僚に相談する代わりにAIを頻繁に使う労働者ほど、ミスが多く、機会損失が増え、無駄な時間が多く、チームの足並みがそろわない度合いが大きいと報告している。この結果が筆者の目を引いたのは、好奇心に関する研究を長年続けてきた中で得た示唆を裏づけるものだったからだ。
好奇心は本質的に社会的である。最良のアイデア、発見、イノベーションの多くは、個人がすばやい答えをそのまま受け入れるのではなく、人々が共に前提を問い直すときに生まれる。
なぜ職場のAIが独創的な思考を減らしてしまうのか
レポートが指摘するもう1つの大きな懸念は、SurveyMonkeyが「スクロール反射(the scroll reflex)」と表現する現象だ。従業員が、より深く掘り下げるよりも、最初に得た答えを受け入れることに条件づけられているという考え方だ。
AIを使う労働者の3分の1超が、AIの出力をほとんど、あるいはまったく異議を唱えずに受け入れていると答えた。興味深いことに、その多くが実際にはAIよりも同僚のほうを信頼していると認めている。AIのスピードと利便性は、「答えが速いほど答えが良い」という錯覚を生み出しかねない。
レポートはまた、AIが生成したアイデアと、人間が独立して生み出したアイデアを比較した研究にも言及している。人間が単独で取り組んだ場合、AIと並走して作業した際よりも、顕著に独自性の高いアイデアを生み出したという。この結果は、同じようなデータセットで学習した同種のツールに従業員がますます依存する環境において、独創性、探索、批判的思考がどうなるのかという重要な問いを投げかける。
これは、組織がまだ十分に認識できていない「見えないコスト」の1つだ。AIは生産性を確実に高め得るが、従業員がAIの自動サジェスト(先回り予測)に過度に依存するようになれば、組織はイノベーションを駆動する思考の多様性を、ゆっくりと失っていく可能性がある。


