予定ポイントへ精密に着水
打ち上げから47分が過ぎたころ、高度80kmあたりでシップの機体表面にプラズマが発生し、大気圏再突入がはじまった。10分以上にわたって超高温にさらされたあと、高度42kmでフラップを大きく展開し、そのストレステストが行われた。さらに高度36kmまで降下すると、バンキング・マニューバが開始され、機速が亜音速まで低下した。このマニューバは、将来的にタワーアームによる捕獲着陸で必要になる機動であり、そのシミュレーションとして実施された。
高度が20km以下になると、シップは機体姿勢を水平状態に保つベリーフリップ・マニューバへと移行し、腹ばいの状態で降下しはじめた。高度1kmで2基のエンジンが再点火されると機体姿勢は垂直となり、打ち上げから1時間6分後には予定ポイントへ軟着水した。貴重な実証データを取得したシップは着水直後に爆発し、インド洋に沈んだ。
宇宙インフラ構築とアルテミスが加速
今回のテストの成功には大きな意義が伴う。設計を全面的に改めた新仕様でありながら、打ち上げから軟着水までの基本工程を成し遂げたことは、2027年のアルテミス3で予定される有人低軌道テストの実行可能性を保ったといえる。また、ダミー衛星の軌道上リリースに成功したことは、スターリンクV2による5G通信や軌道上データセンターなど、将来的な宇宙インフラの構築を大きく前進させるだろう。
ブースターとシップの一部エンジンが停止したにもかかわらず、予定軌道への投入に成功したことで、新型スターシップの冗長性も証明された。また、耐熱シールドに目処がついた点も重要なポイントだ。メンテナンスフリーで連続的な再使用を目指すスターシップでは、耐熱シールドの開発が最重要課題とされているが、マスク氏によると、今回の飛行テストでは耐熱シールドのパネルが溶け落ちることなく、再突入時の高熱に耐えたという。
スターシップにおける軌道上での推進剤補給テストは2026年内に予定されている。また、シップの捕獲着陸を13~15回目の飛行テストで実施する可能性があることを、マスク氏は過去に発言している。こうしたスターシップの開発工程が確実に達成されれば、米国の宇宙計画は今後さらに加速すると思われる。


