サイエンス

2026.05.24 10:00

中国の研究開発費、米国を上回り世界一に トランプが解任した科学審議会が残した「屈辱的」な警告

2026年4月1日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターからNASA主導の月周回ミッション「アルテミスII」の宇宙飛行士4人を乗せた有人宇宙船オリオンを搭載して打ち上げられる大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」(NASA HQ PHOTO, Public domain, via Wikimedia Commons)

2026年4月1日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターからNASA主導の月周回ミッション「アルテミスII」の宇宙飛行士4人を乗せた有人宇宙船オリオンを搭載して打ち上げられる大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」(NASA HQ PHOTO, Public domain, via Wikimedia Commons)

中国はすでに研究開発費支出で米国を追い越し、世界1位となっている。これは、ドナルド・トランプ米大統領によって4月に全委員が解任された全米科学審議会(NSB)がまとめていた報告書の内容だ。

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米国の科学競争力に関する隔年報告書『米国の科学・工学の現状 2026年版(The State of U.S. Science and Engineering 2026)』(通称:Indicators)によると、中国の研究開発費は2024年時点で1兆300億ドル(同年末レートで約163兆円)で、米国の1兆100億ドル(同約160兆円)を初めて上回った。

今週、全米科学アカデミー(NAS)の会員でカリフォルニア大学デービス校特別教授のウォルター・リールは、自らが筆頭者として4月に上院歳出委員会に送付した連邦科学予算削減を憂慮する書簡が「外部の専門家の証言」として上下両院の小委員会で正式に採用されたことを報告した。ノーベル賞受賞者48人、全米科学賞受賞者30人、NASと全米工学アカデミー(NAE)、全米医学アカデミー(NAM)の会員合わせて1500人以上を含む3375人が署名した書簡は、2027会計年度の連邦研究予算削減案について「一世代分の科学的人材の喪失を招く」と警告している。

下院労働・保健福祉・教育・関連機関小委員会は6月5日に米国立衛生研究所(NIH)の予算案を審議する。上院では現在、公聴会が開かれている。

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増える署名、若手研究者の間に危機感広がる

リール教授らが上院に書簡を送付するのは、昨年8月に続いて2回目だ。約2000人が署名した最初の書簡は、研究機関の予算削減案が「経済、公衆衛生、国家安全保障、イノベーションに取り返しのつかない結果をもたらすだろう」と警告していた。今回、署名の数は前回比で50%以上増加し、新たに署名した賛同者のうち200人以上がアシスタント・プロフェッサー(助教)だ。政策変更の影響を真っ先に被る若手科学者たちである。

2回とも書簡に署名したジョージア工科大学の海洋生態学者でNAS会員のマーク・ヘイは、支持の広がりそのものがニュースだと語る。「これほどの意見の一致は異例だ。科学者というのは、生涯を研究に捧げている。そして、攻撃されている矛先は単に科学にとどまらない。真実という概念そのものなのだ」

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翻訳・編集=荻原藤緒

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