サイエンス

2026.05.24 10:00

中国の研究開発費、米国を上回り世界一に トランプが解任した科学審議会が残した「屈辱的」な警告

2026年4月1日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターからNASA主導の月周回ミッション「アルテミスII」の宇宙飛行士4人を乗せた有人宇宙船オリオンを搭載して打ち上げられる大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」(NASA HQ PHOTO, Public domain, via Wikimedia Commons)

トランプ政権の2027年度予算案には、表面上の削減率からは見えない構造的な政策変更が組み込まれている。

advertisement

たとえばNIHの予算は要求書では10.8%削減となっているが、その内訳には国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の予算28%カット、各大学の研究インフラ維持に欠かせない施設管理費を最大15%とする上限設定、そして競争的研究助成金の初年度全額執行を義務化することが含まれている。政権の予測では、NIHの競争的研究費の新規交付件数は47%減少する見通しだ。

米疾病対策センター(CDC)の表向きの削減率は3.47%だが、リール教授の分析によれば、クルーズ船でのハンタウイルス集団感染やエボラ出血熱の新たな流行がニュースになる中、14件のCDCプログラムの廃止が提案されている。

議会に提出されなかった提言

トランプは4月、全米科学審議会(NSB)の委員22人全員を解任した。この解任劇によって中断された事態について、科学誌サイエンスのジェフリー・マービス記者が今月14日付の記事で報じている。

advertisement

NSBは『米国の科学・工学の現状 2026年版』に添えて提出するカバーレターとして、2ページにわたる文書の最終調整中だった。この中では、米中関係を「リーダーシップをめぐる2強対決」であり「短距離走ではなくマラソンだ」と描写していた。要するに、米国が技術的優位性を維持するためには、連邦政府による継続的かつ多額の投資が必要だと説く内容だ。しかし、NSBは委員全員が解任されたために、この文書を承認する機会を得られなかった。

6年の任期半ばで委員を解任されたバンダービルト大学の天体物理学者ケイバン・スタッスンは、文書に採用した表現は意図的なものだったとマービスに語っている。「2強対決などという言葉は、自分が2位に転落した場合にしか使わない。スプートニク号の打ち上げに対抗し、月面着陸を目指す競争に打ち勝つためあらゆる手段を講じた国にとって、それは屈辱的なことだ」

このカバーレターは公表されることはなかったが、その内容を裏付けるデータは公開された。

なぜ今、警鐘を鳴らすのか

『米国の科学・工学の現状 2026年版』の関連指標からも、米国の競争力の低下は見てとれる。2000年当時、世界の研究開発費支出に中国が占める割合は約5%だったのに対し、米国は単独で39%を占めていた。しかし、2024年には韓国のサムスン電子が米国特許の取得数で1位となり、特許数1万2220件で米国企業のアップル、クアルコム、IBMの合計を上回った。

米国の大学から技術ライセンス供与を受けて設立された米国内のスタートアップは、2020年のピーク時の1125社から951社に減少。理工系博士号の年間授与数は2019年に中国に追い抜かれ、その差は拡大している。

次ページ > 『米国の未来』を中国が築くことになる

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事