上海に本拠を置くAgibot(アジボット)は、おそらく世界最大級のヒューマノイド(ヒト型)ロボットメーカーだ。同社は2025年に約5100台を出荷し、世界市場の39%を占めた。今年初めには累計出荷台数が1万台を超え、創業後最初の3年間の合計を、わずか3カ月で上回った。現在は17カ国以上で、ヒューマノイドロボットとRaaS(Robot-as-a-Service、ロボットをサービスとして提供する仕組み)を提供している。
私は先日、Agibotの身体性AI(現実世界で身体を使って動くAI)事業部門のプレジデントであるヤオ・マオチン博士に、メールでインタビューする機会を得た。
知りたかったのは、同社が出荷した数千台のロボットがどこで使われているのか、ヒューマノイドロボットの時代が本格的に始まる転換点はいつ訪れるのか、現在の最大の障壁は何か、Agibotが保護主義的な動きの可能性も含めて世界市場をどう見ているのか、ハードウェアとソフトウェアの垂直統合をどう考えているのか、そして将来、人間とロボットがどのように協働すると見ているのかである。
このインタビューでヤオ博士は、ヒューマノイドロボット業界は現在、生産能力よりもはるかに重要な境界を越えようとしていると述べた。それは、デモから実運用への移行である。ヤオ博士はこれを、技術探索の「Xカーブ」から、現実世界で導入が広がる「Yカーブ」の初期段階へ移る動きだと位置づけている。
ヤオ博士は、中国のロボット企業を差別化しているものについても率直に語っている。しかもそれは、多くの欧米の観察者が想定しているものとは違う。
筆者: 最近発表された規模は印象的です。これらのロボットはどこに向かっているのでしょうか。研究所ですか、工場ですか、家庭ですか、オフィスですか。
ヤオ博士: 現段階では、ヒューマノイドロボットはまず、需要が比較的明確で、環境を制御しやすく、価値創出の閉じた循環を作れる場面に入っています。具体的には、工業生産、物流・倉庫、商業サービス、警備・点検、研究・教育、データ収集、利用場面の検証などです。
私たちの見方では、身体性AI(Embodied intelligence/Embodied AI。具身智能)の産業は「Xカーブ」から「Yカーブ」の初期段階へ、徐々に移行しています。Xカーブとは、基本的には技術探索の段階です。ロボットが動けるか、見られるか、理解できるかを証明することに業界が集中する段階です。Yカーブは導入が拡大する段階です。焦点は、ロボットが本当に業務フローに入り、継続的かつ安定的に稼働し、実際の生産性向上を生み出せるかどうかに移ります。
そのため、この段階で大規模導入が始まるのは家庭ではありません。工業、商業、サービスの場面から始まります。これらの場面では作業頻度が高く、投資対効果が明確です。また、導入を通じて本物のデータの好循環を生み出しやすく、それが信頼性、知能、汎化能力の向上につながります。
家庭はもちろん、長期的には非常に重要な方向性です。しかし家庭環境では、安全性、コスト効率、対話の質、長期安定性、汎化能力について、はるかに高い水準が求められます。ヒューマノイドロボットが家庭に大規模に入るには、技術スタックがさらに成熟する必要があります。
私たちにとって、規模の意味は、単に何台のロボットを生産したかではありません。実際の現場に入り、継続して稼働し、再現可能で拡張可能な導入モデルを形成できるロボットが何台あるかです。それこそが、身体性AIが生産性インフラになり始めたことを示す本当の兆候だと考えています。
筆者: 約2年で1000台に達し、その後約1年で1000台から5000台、さらにもう1年で5000台から1万台になりました。次の1万台、あるいは10万台について、社内目標はあるのでしょうか。
ヤオ博士: これはもはや、単なる生産台数の問題ではありません。
過去数年、私たちは研究開発、製造、サプライチェーン、納入能力で確かに急速な進歩を遂げてきました。業界もまた、ロボットが歩けるか、走れるか、あるいは一定の複雑な動作を完了できるかといった、技術そのものの証明により集中していました。しかし今年からは、非常に明確な変化が起きています。より多くの顧客が、ロボットをどう導入するか、導入をどう横展開するか、投資対効果をどう計算するかについて、真剣に議論し始めています。この変化は非常に重要です。
以前は、多くのプロジェクトがデモ志向、あるいは検証志向でした。しかし今では、一部の顧客が、1台または数台のロボットから、1つの工場、1本の生産ライン、さらには複数拠点への導入へ移行し始めています。彼らはロボットを、目新しい機器ではなく、生産性を高める道具として扱い始めているのです。
社内では、次の段階について特定の数字に過度にこだわってはいません。
数字そのものよりも、ロボットが本当に業務フローに入っているか、顧客が継続して再購入するか、利用場面を大規模に横展開できるか、導入されるにつれてロボットがより安定し、より賢くなるかを重視しています。
ヒューマノイドロボット業界にとって、本当の変曲点は、生産能力が増えるときだけではありません。需要が好循環を形成し始めるときです。
現在でも多くの人は、ロボットがいつ広く普及するのかと問い続けています。しかし私たちが知っているのは、ロボットが現実の場面で安定した価値を生み出し始めると、需要そのものが多くの人の予想より速く伸びる可能性があるということです。したがって将来が10万台なのか、それ以上なのかは、供給だけで決まるわけではありません。より重要なのは、業界が「ロボットを売る」段階から「成果を提供する」段階へ、本当に移行を完了する時期です。そして私たちは、その流れがすでに始まりつつあるのを見ています。



