クラウドおよび通信業界で、提携活動とエヌビディアによるM&A(合併・買収)の可能性を巡る観測が勢いを増している。そこには理由がある。AIインフラを巡る競争が複雑化し、その重要性も高まる中で、より完成度の高い技術統合と販売チャネルにおける専門知識の必要性が浮上しているためだ。
最近の報道では、エヌビディアがデル・テクノロジーズやHPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)との合併を検討したと伝えられたが、エヌビディア幹部はそうした報道を否定し、事実無根だとべている述。
一方、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、猛烈なペースで提携を進め続けている。今週開催されたデル・テクノロジーズ・ワールド(Dell Technologies World)でデルとの新たな提携を発表した際、フアンはAIインフラの需要は「放物線状」に伸びており、新たなソリューションが求められていると語った。これはもちろん、世界最大手のハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)が2026年に7000億ドル(約110.6兆円。1ドル=158円換算)のインフラ投資を行うと見込まれていることの結果である。
統合型AIシステムが鍵
ではなぜエヌビディアに支援や追加の資産が必要なのか。同社はAIチップとシステムの分野で依然として揺るぎない首位にいるが、AIインフラの複雑さを考えれば、製品を顧客に届けるには多様な専門知識と導入支援が必要なのは明らかだ。AIインフラ市場が推論(インファレンス:学習済みAIによる実行処理)や企業向けへと広がる中で、より広い販売チャネルや統合に関する専門知識も必要となるかもしれない。
AIに対する需要が急増する中、電力、光部品、メモリーチップ、ネットワーキングシステムなど数多くのボトルネックが存在する。インフラ設計者たちも、AIインフラを迅速に展開するための支援が必要だと語っている。
ここで力を発揮してきたのが、シスコシステムズ、デル、HPEといった既存の大手企業である。エヌビディアやAMDといった主要な半導体メーカーは、こうした大手テクノロジー企業と組み、リファレンスデザイン(標準設計)や製品ポートフォリオ向けの統合製品の開発を進めている。
シスコのチャック・ロビンズCEOは、5月11日の週に発表された同社の決算報告で統合上の課題について言及し、シスコシステムズ幹部は年間の成長率予想を15%前後に引き上げた。ロビンズによれば、顧客はシスコシステムズの統合型AIインフラに集まっているという。このインフラには独自のネットワーキング、光学部品、カスタムシリコン(専用半導体)が含まれ、信頼できる部品の確保に苦労しているサプライチェーンに対し、より優れた管理を可能にしているという。
エヌビディアの最も目立つ提携の1つは、2025年初めに締結したシスコシステムズとの提携であり、両社共同のネットワーキングソリューションをパッケージ化するものだ。今週のデル・テクノロジーズ・ワールドでは、デルがエヌビディアのコンポーネントを採用した新たなAIファクトリー(AI Factory)を発表した。その中には、コスト削減とセキュリティ強化を目的としたデスクサイド型のエージェント型AIプラットフォームも含まれる。
しかしこれは、ほんの氷山の一角にすぎない。3月、エヌビディアは次世代のVera Rubin DSX AIファクトリーのリファレンスデザイン開発において、膨大な数のパートナー企業を発表した。そのリストには、Dassault Systèmes、Eaton、 Jacobs、PTC、Schneider Electric、Siemens、Vertivなど、多様なテクノロジー企業や産業系企業の幅広い顔ぶれが名を連ねている。



